インターネットの普及に伴い、グローバル市場での成功は多くの企業にとって不可欠な目標となっています。海外の顧客と直接つながる機会が増え、ビジネスの成長を加速させる必要性も高まっています。
しかし、異なる言語や文化を持つ市場に対応するには、単にWebサイトを翻訳して公開するだけでは不十分です。戦略的なアプローチと適切で具体的な手法が求められます。
そこで本記事では、海外向けサイトの作り方や多言語対応の方法などについて詳しく解説します。
目次
海外向けサイトを作る目的と重要性
インターネットの普及により、国境を越えたビジネスチャンスが大幅に増加しています。多くのユーザーが検索エンジンを使って市場にアクセスしている現状を考慮すると、海外向けサイトの作成は企業の成長と発展に不可欠と言っていいでしょう。
海外向けサイトを作成することで、世界中の潜在顧客にリーチできるだけではなく、異なるタイムゾーンにいる顧客にも24時間対応が可能となります。これにより、時間や場所に捉われずに取引が可能になるのも大きなメリットです。顧客満足度とリピート購入の向上にもつながるでしょう。また、地域依存からの脱却によりリスク分散も実現できます。
さらに、企業のグローバルなブランドイメージを構築するためにも重要であり、国際的な企業としての信頼性と専門性をアピールするのにも役立ちます。これにより、競合他社に対して優位に立てるチャンスも増えるでしょう。
海外向けサイト作成の事前準備
海外向けサイト作成の事前準備は、下記のような流れで行います。
- 記事の目的と対象読者を明確にする
- ターゲット市場の文化と競合を調査する
- ターゲットに適したドメインを決める
- 現地のweb環境を調査する
- コンテンツを決める
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.記事の目的と対象読者を明確にする
まずは、記事の目的と対象読者を明確にし、それに基づいてサイトの方向性とトーンを決めます。主な目的としては、製品の販売促進やブランドの認知度向上、情報提供などが挙げられるでしょう。
対象読者を具体的にイメージすることが重要です。年齢層、職業、興味関心、生活スタイルなどを考慮して、ペルソナを作成すると効果的です。
たとえば、アメリカ向けに日本の和菓子を販売するサイトを作る場合、目的は「日本文化を紹介しつつ、和菓子の魅力をアピールして購入を促す」ことになります。対象読者は「アメリカ在住で、日本のユニークなスイーツに興味を持つ層」です。作成すべきコンテンツには、日本の伝統的なデザートの説明や歴史的背景なども含めると良いでしょう。
2.ターゲット市場の文化と競合を調査する
適切なマーケティング戦略とメッセージの方向性を決まるために、ターゲット市場の文化や価値観、競合に関する調査をします。単に日本語の記事を翻訳をするだけでは不十分なので注意しましょう。
たとえば、ヨーロッパ市場をターゲットに化粧品を販売するのであれば「オーガニック」や「クルエルティフリー(動物実験なし)」といった製品特性が重要視されている点に注意が必要です。競合サイトを調査した結果、多くのブランドが「自然素材」と「サステナビリティ」を強調している場合は、自社製品もこれらの特長を強調しなければいけません。
ただし、競合を真似るのではなく、自社の強みを活かしながら競合との差別化を図ることが大切です。現地のSEO(検索エンジン最適化)と、ソーシャルメディアの利用状況なども把握しておくといいでしょう。現地文化の理解を深めることができ、サイトの構築と運営戦略の立案にも役立ちます。
3.ターゲットに適したドメインを決める
ドメインはWebサイトの住所のようなものであり、ブランドイメージやサイトの信頼性に大きく影響します。まずは、国別トップレベルドメイン(ccTLD)か、一般トップレベルドメイン(gTLD)のどちらを使うのかを決めましょう。
たとえば、フランス向けのサイトなら「.fr」、ドイツ向けなら「.de」といったccTLDは、その国に特化したサイトであることを明示できます。ただし、ccTLDを使用する場合、サイトの管理は煩雑になるので慎重に検討する必要はあるでしょう。
一方、グローバルなブランドイメージを重視する場合は、「.com」や「.org」などのgTLDがおすすめです。gTLDは、国を問わず広く使用されており、商品の販売やサービスを展開する企業で多く採用されています。
※例
企業 | 日本 | 海外 |
---|---|---|
JAL(日本航空) | jal.co.jp | jal.com |
トヨタ自動車 | toyota.jp | toyota.com |
コンテンツの管理を一元化したい場合は、gTLDのサブディレクトリを採用するのも、ひとつの方法です。ただし、サイトの構造が複雑になる可能性はあります。
※例
企業 | 日本 | 海外 |
---|---|---|
旭化成 | asahi-kasei.com/jp/ | asahi-kasei.com |
Microsoft | microsoft.com/ja-jp/ | microsoft.com/en-us/ |
サイトの構造をシンプルにしたい場合は、gTLDのサブドメインを採用するほうがいいでしょう。
※例
企業 | 日本 | 海外 |
---|---|---|
indeed | jp.indeed.com | indeed.com (US) |
スクエア・エニックス | jp.square-enix.com | square-enix.com |
ドメインは1度決定すると変更が難しいため、将来の事業展開を見据えたうえで慎重に検討しましょう。
海外向けのドメインの特徴について、下記の記事でも詳しく解説しています。
海外SEO対策を成功させるためのポイントを徹底解説!言語別・国別のアプローチ方法も紹介
https://simplique.jp/global-seo-strategy/#SEO-20
4.現地のWeb環境を調査する
ターゲットとする国のインターネット普及率や、使われているデバイスなどを調査します。
モバイルデバイスの利用が主流の国であれば、モバイルファーストのデザインを採用しなければいけません。また、接続速度が遅い地域の場合は、軽量なサイト設計が求められるでしょう。
5.コンテンツの内容を決める
コンテンツの内容を現地市場に合わせて調整します。ターゲットとなる国によっては、単なる情報提供ではなく、現地の文化や習慣に合わせたコンテンツを用意することで、より効果的なアプローチができます。
例
- 製品の使用方法を現地の生活スタイルに合わせる
- 地域特有の問題解決方法を提案する
- FAQ(よくある質問)セクションを設ける
- 画像、動画、インフォグラフィックなど、多様な形式を用いる
など
手法別!海外向けサイトの作り方
ここからは、手法別に海外向けサイトの作り方を詳しく解説していきます。
wixやJimdoなど簡単にWebサイトが作れるサービスを利用する方法
wixやJimdoは、サイトを簡単に作成できるWebサイトビルダーサービスです。
wixとJimdoでは多少の違いはありますが、基本的な手順は下記の通りです。
1.アカウントを作成する
メールアドレスやパスワードなどの基本情報を入力して新規アカウントを作成します。
2.テンプレートを選択する
ブランドイメージやコンテンツに合ったテンプレートを選択します。サービスによってはAIで生成することも可能です。
3.コンテンツを作成する
文章、画像、動画などを適切に配置しながらコンテンツを作成します。
4.ビジネス機能を追加する
オンライン決済や予約機能などを追加します。たとえば、Wixにはビジネスをサポートする多彩なアプリが用意されているので、初心者でも簡単に本格的なビジネスサイトの構築が可能です。
5.公開する
公開後も継続的に改善することが大切です。
WordPressで多言語対応サイトを構築する
WordPressは人気の高いCMSプラットフォームです。柔軟性に優れているので多言語サイトの構築にも適しています。
WordPressで多言語対応サイトを構築する方法は下記のとおりです。
1.ホスティングサービスの選定
ホスティングサービスには、共有サーバー、VPS、専用サーバーなどの種類が存在します。サイトのトラフィックや予算、管理方法などを考慮して、適切なプランを選択しましょう。
ホスティングサービスの種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
共有サーバー | ・低コスト ・手間がかからない ・初期投資が少ない | ・パフォーマンスに難がある ・リソースに制限がある ・大規模サイトには不向き |
VPS | ・柔軟な設定が可能 ・セキュリティが高め ・小規模~中規模サイト向け | ・セットアップに時間がかかる ・管理負担が大きめ |
専用サーバー | ・自由度が高い ・高性能 ・大規模サイト向け | ・費用が高い ・専門的な知見が必要 |
2.WordPressのインストール
選択したホスティングサービスの説明に沿ってWordPressをインストールします。
3.テーマの選定とカスタマイズ
サイトのイメージに合ったテーマを選択して、オリジナリティのあるサイトを作ります。
4.コンテンツ作成
記事の執筆、画像や動画の挿入、SEO対策などを行います。メニューの構築やサイドバーなども含めてサイト全体の構造を整備しましょう。
5.翻訳プラグインや自動翻訳を使って多言語対応する
専用のプラグインを使えば、多言語サイトを簡単に構築できます。代表的なプラグインとしては「WPML」や「Polylang」などが挙げられるでしょう。
自動翻訳プラグインを使えば、ユーザーが選択した言語でコンテンツを閲覧できるようになります。103の言語に対応している「Translate WordPress with GTranslate」は特におすすめです。
6.公開する
作成したコンテンツを公開して完了です。
フルスクラッチで制作する方法
フルスクラッチとは「ゼロから完全に新しく作ること」を意味します。
フルスクラッチで作成する方法は、下記のとおりです。
1.プランニング
必要な機能やデザインなどの要件を決めていきます。開発工程とタイムライン、使用する言語、フレームワークも選定しまょう。
2.デザインとコーディング
ユーザーが使いやすく魅力的なデザインを作成します。配色やフォント、レイアウトを国際的な感覚に合わせることが大切です。さらに、HTML、CSS、JavaScriptなどを活用してデザインを実装します。
3.サーバーとドメインの設定
ホスティングサービスを選定したら、必要なソフトウェアをインストールしてサーバーの環境を設定します。セキュリティ対策としてファイアウォールの設定とアクセス制限も実施しましょう。取得したドメインのDNSの設定も行います。
4.テストと公開
機能やセキュリティのテストも重要ですが、主要ブラウザで正しく表示されるかどうかを確認するクロスブラウザテストも必ず行いましょう。多言語環境で正しく表示・動作することをしっかりとチェックします。
海外向けサイトを作成する方法の選び方
海外向けサイトを作成する方法は「ビジネスの規模と予算」、「運用期間と拡張性」、「技術的なスキルとリソース」を基に選ぶのが理想的です。それぞれに適した方法を見てみましょう。
選択方法 | Wix/Jimdoなど | WordPress | フルスクラッチ |
---|---|---|---|
ビジネスの規模と予算 | 小規模ビジネス低予算 | 中〜大規模ビジネス中予算 | 大規模ビジネス高予算 |
運用期間と拡張性 | 短期的な運用最低限の拡張 | 長期的な運用中程度の拡張 | 長期的な運用大規模な拡張 |
技術的なスキルとリソース | 技術的スキルが少ない リソースが限られる | 技術的スキル中程度リソース中程度 | 高い技術力リソースが豊富 |
ビジネスの規模と予算で選ぶ
予算が限られているスタートアップや個人事業主には、wixやJimdoなどの利用が適しています。基本的には無料で利用できるため、初期投資も抑えられるでしょう。
WordPressは小規模ビジネスでも利用可能ですが、ある程度の予算とリソースが必要です。追加コストが発生する可能性もあるため、中規模以上の企業に適しています。
フルスクラッチでのサイト作成は、独自性と高度な機能が求められる大企業に最適です。十分なスキルと予算が必要なため、中・小企業には難しい選択となるでしょう。
運用期間と拡張性で選ぶ
すぐに運用を開始できるwixやJimdoは、短期間のプロジェクトや特定のキャンペーンに適しています。ただし、制限が多いため、複雑な機能の追加や大規模サイトの運営には向いていません。
WordPressは柔軟性が高く、中長期的な運用に適しています。プラグインやテーマを利用することで、ビジネスの成長に合わせた拡張も可能です。
長期的な運用には、フルスクラッチでのサイト作成が向いています。カスタマイズが可能であり、高度な機能と拡張性を考慮したサイトの構築ができます。
技術的なスキルとリソースで選ぶ
技術的なスキルがない場合は、テンプレートやドラッグ&ドロップの操作で簡単にサイトを構築できるwixやJimdoがおすすめです。デザイナーや開発者を雇う必要もなく、基本的には自分で管理・運用できます。
テーマのカスタマイズやプラグインの設定に関する知識がある場合は、WordPressを利用してみましょう。運用は個人でも可能ですが、サイト規模が大きくなると開発者のサポートが必要になることもあります。
デザイナーやフロントエンド・バックエンド開発者、セキュリティに詳しい人材がいる企業は、フルスクラッチでの作成を検討してみましょう。自社に技術チームがいない場合は、外注することも可能です。
海外向けサイトを作成する際のポイント
海外向けサイトを作成する際には、下記のようなポイントが重要になります。
- 適切な多言語化の方法を検討する
- プラットフォームを共通化する
- ローカライゼーション戦略を展開する
- 文化的な背景を考慮する
- ユーザーインターフェース(UI)を調整する
- 各国の法的要件に対応する
- 支払い方法を多様化させる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
多言語化をする方法を検討する
多言語化の方法を検討する際に重要なのは、翻訳の質です。
WordPressには多言語対応のプラグインが豊富に揃っており、Wixでもマルチリンガル機能を利用すれば簡単に言語切り替えボタンを設置できます。多言語対応ツールを使用した機械翻訳も手軽ですが、文化的なニュアンスを正確に伝えられないことが多いので注意しましょう。
自然な文章を作成したい場合は、海外向けサイトの制作実績が豊富な専門会社に外注することをおすすめします。
プラットフォームを共通化する
プラットフォームの共通化とは、複数の国に向けたWebサイトを同じシステムや技術基盤の上に構築することです。プラットフォームを共通化することで、効率的な運営と一貫性のあるブランド体験を提供できます。
また、コンテンツの更新やデザインの変更を一元管理できるため、コストの削減にもつながるでしょう。
ローカライゼーション戦略を展開する
記事は単に翻訳するだけでなく、現地の文化や習慣、ニーズに合わせて最適化しましょう。
現地の言葉遣いやスラングを考慮することも大切です。たとえば、イギリス英語とアメリカ英語では、同じ意味でも異なる単語を使うケースがあります。
このような細かい違いに注意を払うことで、より自然で親しみやすい表現の文章に仕上がるでしょう。
文化的な背景を考慮する
違和感のないサイトを作成するためには、ターゲットとなる国の文化的な背景を考慮しましょう。日付や時間の表記方法、数字の使い方などは、各国の文化によって異なります。
文章のトーンも文化に合わせて調整する必要があるでしょう。直訳ではなく、その国の人々に共感を得られる表現を使うのが理想です。
ユーザーインターフェース(UI)を調整する
ユーザーインターフェースの適切な調整は、使いやすさと快適性を大幅に高めます。特に、言語の違いによるレイアウトの調整は欠かせません。
たとえば、アラビア語やヘブライ語のように右から左に読む言語では、サイト全体のレイアウトを反転させる必要があります。
また、入力フォームの住所や電話番号の形式も国によって異なるため、各国の形式に合わせてカスタマイズし、使いやすさを向上させましょう。
各国の法的要件に対応する
法的なトラブルを防ぐためにも、各国の法的要件に適切に対応することが重要です。酒類や医薬品などの特定商品の販売は国ごとに異なる規制があるため、十分な注意が必要です。
また、特定の業界に対して宣伝・広告内容に厳格な規制がある国にも気をつけましょう。法律は変更される可能性があるため、定期的な見直しと更新を行うことも欠かせません。
支払い方法を多様化させる
国や地域によって、好まれる支払い方法や普及している決済システムは異なります。ニーズに合わせて多様な支払い方法を提供することで、売上の増加と顧客満足度の向上につながるでしょう。
たとえば、クレジットカードは世界的に広く使用されている支払い方法ですが、普及率と利用頻度は国によって異なります。主要なクレジットカードブランドをサポートしつつ、他の支払い方法も用意しましょう。
特に電子決済は重要な選択肢です。PayPalは多くの国で広く使用されていますが、地域によっては他の決済システムが主流となることがあります。たとえば、中国ではAlipayやWeChat Pay、ドイツではオンラインバンキングのSOFORT、オランダではオンライン決済iDEALなど、国ごとに異なるシステムが好まれています。
海外向けサイトの作成は外注もおすすめ
外注を利用することで、豊富なノウハウを持つ専門家のサポートを受けられます。専門業者は文化的な違いや技術的な要件にも詳しいため、自社内に専門知識がなくても、ターゲット市場に適したサイトの作成が可能です。ネイティブのライターがいる業者に依頼すれば、自然な翻訳もスムーズに行うことができます。
外注にはコストが発生しますが、労力とリソースの確保を考えると、費用対効果が高くなるケースも少なくありません。
十分な人材や時間の確保が難しい場合は、専門会社への外注を検討するのが良いでしょう。
記事を外注する際の注意点について、下記の記事でも詳しく解説しています。
SEO対策の依頼で失敗しないためのステップガイド
https://simplique.jp/stepbystep-guide-of-seo-outsourcing/
海外向けサイトの作り方をマスターして国際市場の競争力を高めよう
海外向けサイトの作り方は、それぞれ特性が異なります。ビジネスの規模、運用期間、コストなどのさまざまな要因を総合的に判断し、メリットとデメリットを比較しながら最適な方法を選択しましょう。
ただし、どの方法を選択してもサイト作成時に抑えておくべきポイントは意識しなければいけません。自社で対応が難しい要素もあるため、専門会社への外注も選択肢の一つとして考えるのが良いでしょう。
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