コンテンツ制作における「インタビュー」とは、少人数で実施する対面取材のことです。1名~数名のインタビュイー(取材対象者)から情報をヒアリングするインタビューは、単に準備した質問に答えてもらう作業ではありません。
本記事では、担当したインタビュー記事数3,500本以上・インタビュー記事作成20年以上の実績を持つプロの取材ライターの視点からインタビューの実施手順と重視すべきポイントを解説します。
シンプリックの「インタビュー記事制作」は、編集職25年を誇る編集長・白石監修のもと、”AI時代に求められる商品・サービスの真の魅力”を引き出すコンテンツ制作サービスです。
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目次
インタビューを行う目的と意義
まず、インタビューを実施する目的と意義を解説します。
インタビューを行うメリット
インタビューを実施する最大のメリットは、Web上での情報収集では難しいインタビュイー(取材を受ける人)の実体験や考えといった独自性の高い情報を引き出すことができる点にあります。
適切なインタビューを行うことで、読者が関心を持ちやすい、説得力のある記事作成が可能です。
| インタビューによって作成する主な記事コンテンツの例 ・企業や団体の公式メディアに掲載する経営者/社員インタビュー ・製品やサービスの導入事例・製品やサービスを購入した顧客の声 ・専門性の高いテーマに関するエキスパートの解説記事 |
インタビューとアンケートで得られる情報の違い
特定の人物から情報を得る方法としては、インタビューのほか、アンケート調査が挙げられます。アンケートもインタビューと同様、対象者の経験や考えを得るための手法ですが、これらには大きな違いがあります。
多くの対象者に同一の質問をするアンケートは、回答件数を重視する「定量調査」と呼ばれるものです。大規模な調査を短期間、かつ低コストで実施できます。どのような傾向があるのかを客観的に見極めるためのデータ収集に向いています。
一方、インタビューで重視されるのは、情報の質的な部分です。インタビュイーの発言内容に即して追加や補足質問を実施し、質問項目を深く掘り下げることができる点が、インタビューの大きな特徴です。
プロが実施するインタビューとは
事前に準備した質問項目に対する回答を記録するだけであれば、特にスキルやノウハウは必要ありません。インタビューの専門スキルを有するライターが備えているのは、インタビュイーの立場や回答、インタビューの実施環境など複数の要因を踏まえて、質問や時間配分の変更などを瞬時に判断する専門的なヒアリングスキルです。
インタビューを柔軟に進行させるポイントについては「インタビューを成功させるポイント」の項で解説します。
インタビューに必要な6つの事前準備

インタビューを円滑に行うには、十分な事前準備が必要です。質の高い情報をヒアリングするための準備項目について説明します。
1. 記事テーマ、掲載メディア等の確認
インタビュー記事のテーマや目的を明確にし、掲載メディア、掲載時期といった基本的な情報を確認します。
2.インタビュイーの人数・基本情報の共有
クライアントがインタビュイーを選定する案件の場合は、インタビュイーの人数や属性などの基本情報を事前に提供してもらいます。制作チームやライターが取材先を選定する案件では、記事テーマに合致するインタビュイー候補を複数リストアップし、優先順位をつけて取材依頼を行います。
3.インタビューの実施日時・所要時間・場所の決定
インタビューを実施する日時と所要時間、場所を決めます。実施日時は、取材先と制作サイドの都合をすり合わせて、最適な日時の絞り込みを行います。
4.質問項目と優先順位の決定
記事テーマに即した質問項目を挙げ、項目の優先順位付けを行います。事前に重要な質問項目と補足的な項目を分けることで、インタビューをスムーズに進めやすくなります。
5.質問項目リストの事前共有
質問項目と優先順位を整理できた段階で「質問項目リスト」や「質問状」といったタイトルの書面を作成し、クライアントやインタビュイーに共有します。想定している質問を事前共有することで、インタビュイーが事前に情報をチェックでき、正確な情報を得やすくなるはずです。質問リストには「当日の回答内容などによって、質問項目を適宜変更させていただく可能性があります」といった文言を添えることをおすすめします。
6.事前リサーチ
記事テーマとインタビュイーに関する情報をWeb上で収集して、インタビューのベースとなる情報をリサーチします。Webリサーチでは、企業・団体の公式メディアといった信頼性の高いメディアを中心にチェックし、できるだけ最新の情報を確認することが重要です。
| インタビューに必要な事前準備 ・記事テーマ、掲載メディア等の確認 ・インタビュイーの人数・基本情報の共有 ・インタビューの実施日時・所要時間・場所の決定 ・質問項目と優先順位の決定 ・質問項目リスト等の事前共有 ・事前リサーチ |
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インタビューの手順
インタビューの基本的な流れは以下の通りです。
- 自己紹介
- インタビュー実施概要の確認
- インタビューの実施
- 今後の進行についての説明
各項目の留意点を説明します。
1. 自己紹介
取材先の訪問からインタビュー開始時の自己紹介までは、一般的なビジネスマナー以上の事柄を意識する必要はありません。インタビュアーを務めるライターが制作会社やメディア運営会社の社員ではなく、外部の協力スタッフである場合は、自己紹介で伝える肩書きや名刺の受け渡しなどについて、事前に制作サイドで決めておくほうがスムーズにインタビューを開始できます。
自己紹介とあわせて、インタビューに協力してくれたことへのお礼の言葉を伝えます。
| 自己紹介例 「インタビューをさせていただくライターの〇×です。本日は貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございます」 |
2.インタビュー実施概要の確認
自己紹介に続いて、インタビューの実施概要を確認します。確認すべき項目を以下に記します。
| インタビュー実施概要の確認項目 ・インタビューのテーマ/目的 ・主な質問項目(※質問項目リストを共有済みの場合はリストの確認) ・所要時間 |
3.インタビューの実施
事前に作成した質問項目に沿ってインタビューを開始します。開始後は、インタビュイーの発言に応じて、質問の順番や聞き方を調整しながら対話を進めることが重要です。インタビュー中は、経過時間と重要な質問項目に漏れがないかを随時チェックします。
4.今後の進行についての説明
インタビュー完了後、今後の進行についての説明を行い、改めてインタビュイーにお礼をしてインタビューを終了します。
今後の進行の説明例を以下に記します。
| 今後の進行についての説明例 「伺ったお話を記事にまとめ、〇月×日までに共有させていただきます。その際にご本人様チェックをお願いしますので、お手数ですがよろしくお願いいたします。記事の公開は〇月上旬を予定しております」 |
インタビューは、プロに外注するという選択肢もあります。外注時の費用感や選択肢については、以下の記事で詳しく解説しています。
【インタビュー記事の費用相場】取材費など内訳別に解説
インタビューを成功に導く9つのポイント

記事のクオリティを高めるインタビューを実現するには、以下のポイントを理解する必要があります。
- インタビュイーが適度な緊張感を保って話すための雰囲気作り
- 「傾聴」スキルをベースにしたヒアリング
- 質問はできるだけ具体的に
- 回答しやすい順番での進行
- 回答内容に応じて進行を調整する
- 重要項目については補足・追加質問で深掘りする
- ヒアリング内容に曖昧な点がないことの確認
- 対象者の立場や感情を理解した対応
- 具体的なエピソードのヒアリング
各ポイントについて具体的に解説します。
【1】インタビュイーが適度な緊張感を保って話すための雰囲気作り
インタビューは、臨床医の問診や弁護士の法律相談と同様、明確な目的のために専門職が行うコミュニケーションです。冒頭に取材テーマと無関係な雑談をするよりも、最初の質問を少しゆっくりとしたペースで投げかけ、適度な緊張感を保って対話を開始するほうが効果的です。インタビュイーが質問への回答に集中できる雰囲気作りを意識しましょう。
【2】「傾聴」スキルをベースにしたヒアリング
単に質問するだけでなく、インタビュイーの話に耳を傾け、相手の感情や意図を理解しようとする「傾聴」の姿勢が、高品質なインタビューには必要不可欠です。医療や介護の現場などで活用されている傾聴スキルを学ぶことで、価値の高い情報を得ることが期待できます。
【3】質問はできるだけ具体的に
有益な回答を引き出す条件のひとつは、具体的で明確な質問です。曖昧な質問をすると、インタビュイーはどんな回答をすべきかの判断に迷ってしまいます。
具体的で明確な質問と曖昧な質問の例を以下に示します。
| 具体的で明確な質問例 「このプロジェクトへの参加時に感じたメンバーの印象を教えてください」「資金調達以外に、起業する際の課題となった点は何かありましたか?」 曖昧な質問例 「このプロジェクトの人たちって、どうでしたか?」「資金調達みたいなことは、ほかにも何かありましたか?」 |
【4】回答しやすい順番での進行
質問する順番は、インタビュイーの話しやすさを重視して決めます。
インタビュイーが答えやすいと感じる質問順の例を以下に記します。
| 回答しやすい質問の順番例 ・プロフィール確認などシンプルに回答できる質問から始める ・関連性のある質問は続けて行う ・ひとつの事柄の内容や経緯を聞いた上で、対象者が抱いた感情や印象を尋ねる ・メインテーマとやや距離のある補足的な質問は最後にまとめる |
【5】回答内容に応じて進行を調整する
質問リストにこだわりすぎず、回答内容に応じて次の質問内容や順番を柔軟に変更しましょう。柔軟な進行を行うことで、価値ある情報を得やすくなります。
【6】重要項目については補足・追加質問で深掘りする
重要な質問項目は、インタビュイーの回答を受けて補足・追加質問をし、正確で深みのある情報を引き出すようにします。
【7】ヒアリング内容に曖昧な点がないことの確認
インタビュー完了前に、不明確な点がないかを確認します。特に年次や数値などは、正確な情報を伝えてもらえるように注意を払うべきです。
【8】対象者の立場や感情を理解した対応
インタビュイーの立場や感情を理解した上でインタビューを進めることは、上質な情報を得るための必須条件です。対象者から「その点はあまり話したくない」という表情や雰囲気を感じたときにその質問を避ける配慮が、逆に取材テーマに深く踏み込んだ話を引き出す結果に繋がることがよくあります。
【9】具体的なエピソードのヒアリング
「当時がいちばん苦労した」といった回答を得た際には、具体的にどのような苦労をしたのかがわかるエピソードを話してもらいます。具体的なエピソードをヒアリングできれば、記事の読みやすさや説得力を向上できます。
インタビュー中に気をつけたい5つの注意点

インタビュー実施中に意識すべき5つの注意点について説明します。
- 時間配分を意識する
- 撮影を行う際の手順を事前に伝える
- メモとボイスレコーダーを的確に活用する
- 個人情報および非公開情報を適切に取り扱う
- 不測の事態に柔軟に対応する
時間配分を意識する
インタビュー後半に時間が不足するような状況を防ぐために適宜、経過時間をチェックし、適切な時間配分で進行していることを確認しましょう。重要度が高い質問項目については、時間に余裕を持たせるためにインタビュー中盤までにヒアリングすることをおすすめします。
撮影を行う際の手順を事前に伝える
インタビュー中やインタビュー後に写真や動画の撮影を行う場合、取材中の目線や撮影時間などを事前に伝えます。対象者がインタビューに集中できるよう、スムーズな手順で撮影を実施することが大切です。
| 撮影手順説明例 「インタビュー中にお写真を撮らせていただきますが、カメラは気になさらずにお話を続けてください。目線も今のままで大丈夫です。事前にお伝えした通り、インタビュー後に15分ほど撮影をお願いいたします」 |
メモとボイスレコーダーを的確に活用する
インタビューの記録には、基本的にメモとボイスレコーダーを用います。取材メモは、ヒアリングのポイントを簡潔に記録します。重要点をチェックしやすいメモにするには情報に番号を付ける、自分用の記号の使用などが効果的です。ボイスレコーダーは事前に動作確認をし、記録した音声は記事作成時の詳細情報や専門用語の確認などに使用します。
個人情報および非公開情報を適切に取り扱う
回答内容に記事テーマと関係のない個人情報や、企業・団体が非公開としている情報が含まれていた場合には、細心の注意が必要です。特に、企業が公式に発表していない情報が話題として挙がった際には、記事への使用可否を必ず確認し、適切な取り扱いを徹底します。
不測の事態に柔軟に対応する
インタビュー当日に、時間の短縮やインタビュイーの追加・変更といった不測の事態が生じることもあります。
こうした際に重要なのは、慌てずに記事作成のための情報を得るための適切な対応を行うことです。インタビュー時間が短縮された際の主な対応方法を以下に記します。
| インタビュー時間が短縮された際の対応方法 ・重要度の高い項目から優先的に質問する ・後日オンラインミーティングでの補足質問を依頼する ・オンラインミーティングの実施が困難な場合は、メール等での補足質問を依頼する |
インタビューを実施した後は、記事の制作を進行することも多いかと思います。インタビュー記事の書き方・まとめ方については、以下の記事で詳しく解説しています。
【3形式の例文付き】インタビュー記事の書き方・まとめ方完全ガイド
良質なインタビューは、適度な距離感と傾聴から生まれる
インタビューは、記事作成のための情報を得るという明確な目的のために行うコミュニケーションです。記事の品質向上に繋がる情報をヒアリングすることで、企業活動に役立つコンテンツ作成を実現できます。
インタビュー記事に関する疑問が生じた際には、インタビュー記事作成の豊富な実績とノウハウを持つシンプリックにお気軽にご相談ください。

IT、金融、不動産、教育等の分野を中心とした国内外の企業・団体の各種コミュニケーションツール用インタビュー記事作成に20年以上携わる。2025年3月までに担当したインタビュー記事数は3,500本以上。2024年よりシンプリックのエキスパートパートナーとして、インタビュー・取材記事制作を担当。











