これまでの集客手段の主流は、新聞の折り込みチラシやダイレクトメールなどでしたが、スマートフォンの普及でインターネットの利用時間が増え、Webマーケティングが有効な手段となりました。しかし、Webマーケティングの重要性を理解していても、何から始めれば良いのかわからないという方も多いはずです。
本記事では、まずWebマーケティングの全体像を理解いただくために、各手法をご紹介します。その後、Webマーケティングの進め方・始め方、各手法の選び方を解説します。効果検証に必要なアクセス解析ツールの導入方法もぜひ参考にしてみてください。
目次
Webマーケティングってそもそも何?
まずはWebマーケティングの全体像を確認し、何から始めればよいか検討できる状態を目指していきましょう。
Webマーケティングとは
Webマーケティングとは「自社商品・サービスの認知拡大や販売促進をインターネット上で行う」ことです。テレビやラジオのCMや折込チラシなどのリアル媒体を使ったマーケティングとは異なり、集客から販売活動までをWeb上で完結させます。
「どれくらいWebページを人が見たか」「何パーセントの人が注文したか」など、Webマーケティングの効果はすべて数値化されるため、実施した施策の費用対効果を確かめられるというメリットがあります。
数値化されたデータを分析すれば、「どのような広告やページが見込み客獲得につながりやすいか」などが確かめられるため、どこを改善したら集客数が伸ばせるか試行錯誤ができます(PDCAを回すことができる)。
Webマーケティングにはさまざまな方法・手法がある
Webマーケティングの手法は多数あります。Webマーケティングの主な手法と特徴を確認しておきましょう。
SEO(検索エンジン最適化)
検索エンジンの検索結果にサイトを上位表示させ、アクセスを増やす施策です。化粧品を販売している企業であれば「美容液」や「洗顔フォーム」などのキーワードで上位表示を狙います。時間はかかりますが、費用対効果は高めです。
リスティング広告
検索エンジンの検索結果画面にテキスト形式の広告を表示させ集客を図る方法です。キーワードを指定して広告を掲載できるため、SEO対策と同じようにニーズの顕在化したユーザーにアプローチできます。短期間で効果検証ができる点もメリットです。ただし、広告の掲載期間中は費用が発生します。
アフィリエイト広告
金融や不動産、ウェディングなどジャンルに特化したWebサイト、また個人のブログや企業のメールマガジンなどに広告を掲載する方法です。一般的には、アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)を介して、サイトオーナーと提携します。アフィリエイト広告の多くは成果報酬型を採用しているため、ユーザーがアクションを起こさない限り料金がかからない点が魅力です。
アドネットワーク広告
アドネットワークとは、複数のWeb媒体に広告を配信できるサービスです。多くの媒体にまとめて出稿できるため、各メディアと個別に契約するよりも効率よくアクセスを獲得できます。。
SNS広告
TwitterやFacebookなどのSNSに広告を掲載する方法です。年齢や地域、興味関心といった属性を指定して広告を配信できるため、ターゲットへのアプローチに優れています。
リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、ユーザーが過去に閲覧したWebサイトに基づいて広告を表示する方法です。ユーザーがWeb上で何度か目にしている商品やサービスの広告が表示されるため、コンバージョン率が高くなる傾向にあります。ただし、新規顧客の獲得や緊急性の高い商材には向いていません。広告運用の難易度も高いと言えます。
LPO(ランディングページ最適化)
問合せなど、訪問者のアクション喚起に特化した「ランディングページ」の改善を継続することで、コンバージョン率を高める施策です。
EFO(エントリーフォーム最適化)
購入や申込の際に使われるフォームを最適化し、コンバージョンを最大化する施策です。フォームの利便性を高めて入力途中の離脱を防ぎます。
メールマーケティング
既存顧客や見込み客にメールでアプローチする手法です。新規顧客の獲得だけではなく、既存顧客の掘り起こしや満足度向上にも効果的です。
バイラルマーケティング
SNSや口コミを利用して不特定多数に情報を拡散する方法です。一般的には画像や動画を利用し、視覚的な訴求を狙います。
それぞれの手法をまとめた表は以下になります。
手法 | 主な効果 | 費用 | 即効性 |
---|---|---|---|
SEO | 集客・認知拡大 | 場合による | ✖ |
リスティング広告 | 集客・認知拡大 | 安い | 〇 |
アフィリエイト広告 | 集客・認知拡大 | 高い | 場合による |
アドネットワーク広告 | 集客・認知拡大 | 安い | 〇 |
SNS広告 | 集客・認知拡大 | 安い | 〇 |
リターゲティング広告 | コンバージョン率向上 | 安い | 〇 |
LPO | コンバージョン率向上 | 安い | 〇 |
EFO | コンバージョン率向上 | 安い | 〇 |
メールマーケティング | リピーター獲得 | 安い | 〇 |
バイラルマーケティング | 集客・認知拡大 | 場合による | △ |
Webマーケティングの進め方
Webマーケティングの進め方を確認することで、どの手法が自社にあっているか整理ができます。
1.目標を設定する
まずは、最終目標を設定します。目標が「認知拡大」と「製品の購入」では展開すべきマーケティング施策が変わってくるため、最初に目標を明確にしましょう。
2.ターゲットを決める
ターゲットもマーケティング施策を決める大きな要素です。自社商品やサービスを利用して欲しいと思う企業や消費者を明確にイメージし、ペルソナ(モデルとなる顧客像)を文章に書き出してみましょう。
3.最終目標へのプロセスを決める
目標到達のプロセスを決めます。具体例としては「Web上での露出→Webサイトへの来訪→Webページの閲覧→問い合わせ」というステップが考えられます。プロセスを決めたら、各プロセスごとに目標数値(KPI)を決めましょう。
プロセス | 見るべき数値 | 目標数値(KPI)の例 |
---|---|---|
Web上での露出 | 広告などの表示回数 | 300,000 |
Webサイトへの来訪 | ユニークユーザー数(クリック率) | 1,000(0.33%) |
Webページの閲覧 | ページビュー数 | 2,500 |
問い合わせ | コンバージョン数=問合せ数(コンバージョン率) | 3(0.3%) |
4.手法を選ぶ
自社サイトに人を連れてくるには、検索エンジンやSNS上への露出が必要です。ペルソナが利用しているWebサービスはどれかを考え、見込みがありそうなものをいくつか絞ります。例えば、YouTubeとInstagramを自社の見込み客が利用していそうなら、お金をかけて広告を出すか、自社アカウントを作り投稿をしていくかを検討します。予算があるか、社内で対応できる人がいるか、という観点から判断してください。
5.Webマーケティングの実施
選んだ手法を一定期間実施します。必ずGoogleアナリティクスなどの解析ツールを導入し、Webサイトへのアクセス数や問い合わせ数などの数値が確認できる状態で進めましょう。導入方法は後述します。
6.データを確認する
一定期間、Webマーケティングを実施したら、プロセスごとに設定した目標数値(KPI)の達成率を確認します。
7.課題の発見と改善
データの分析結果に基づいてうまくいっている部分・うまくいっていない部分を整理し、改善策を考えます。たとえば、アクセス数が目標を下回っている場合は、選択した広告の種類や画像や文字の見せ方に問題があると考えられます。仮説を立てたうえで、手法ややり方を修正し、また一定期間施策を行います。そして後日データを検証し、改めてやり方を見直します。このように軌道修正を繰り返すことがWebマーケティングを成功させるうえで、もっとも大切なことです。
【まずやるべきこと】アクセス状況が分かる無料ツールの導入
データ分析に役立つ無料ツールには「Googleサーチコンソール」や「Googleアナリティクス」があります。
アクセス状況の把握だけがWebマーケティングではありませんが、アクセス解析は目標を達成するための基本と言えるので事前に両ツールを導入しておきましょう。どちらのツールも利用は無料です。
Googleサーチコンソールの導入方法
Googleサーチコンソールは、Webサイトのパフォーマンス改善に役立つツールです。検索エンジンにおける下記のようなデータを分析できます。
- 表示回数
- 平均掲載順位
- 検索されたキーワード
- クリック率
など
このようなデータを活用すれば、検索ニーズの深掘りや自社商品に対する需要を探ることも可能です。SEO対策においては欠かせないツールと言えるでしょう。
Googleサーチコンソールの導入方法は下記のとおりです。
1.登録ページにアクセスして「今すぐ開始」をクリックします。
2.「ドメイン」か「URLプレフィックス」からプロパティタイプを選択してURLを入力します。サイト全体で計測する場合は「ドメイン」を、サイト全体、または、サイト内のページを指定して分析するときは「URLプレフィックス」を選択しましょう。基本的には「ドメイン」の選択で問題ありません。
3.「ドメイン」を選択すると、所有権を確認するためのTXTレコードが表示されます。コードをサーバーに設定したら「確認」を押してください。設定方法は各サーバーによって異なるので、事前に確認しておきましょう。
Googleアナリティクス(GA4)の導入方法
Googleアナリティクスは、サイトにアクセスしたユーザーの行動を可視化できるツールです。
- アクセス数
- 滞在時間
- 流入経路
- 年齢、性別
など
サーチコンソールは「サイトにアクセスする前の行動」の分析に使いますが、アナリティクスは「アクセス後の行動」を分析する際に使います。
Googleアナリティクスの導入方法は、下記のとおりです。
1.公式サイトにアクセスして「測定を開始」をクリックします。
2.アナリティクスアカウントの登録とデータの共有設定を行ないます。
3.プロパティの詳細を設定します。プロパティ名は分析するサイトの名前、タイムゾーンは「日本」、通貨は「日本円」を選択してください。入力が終わったら「詳細オプションを表示」を選択します。
4.「ユニバーサルアナリティクスプロパティの作成」をONにします。ウェブサイトのURL欄には、分析対象のドメイン名を入力してください。続いて「Googleアナリティクス4とユニバーサルアナリティクスのプロパティを両方作成する」を選択します。GA4プロパティとUAプロパティでは、分析画面や計測方法が異なります。GA4プロパティに未対応のWordPressテーマも少なくありません。GA4プロパティからUAプロパティへの切り替えはできないため、両方を作成しておくことを推奨します。
5.各種情報を入力して「作成」をクリックします。
6.利用規約が表示されたら「同意する」を選択します。
解析ツールを導入したらまず検討したい5つの施策
解析ツールの導入後に検討したい施策を5つ紹介します。
1.企業ブログやコラムをはじめる(SEO対策)
SEO対策の基本とも言えるのが、自社運営のブログやコラムです。「オウンドメディア」とも呼ばれます。近年多くのブランドや企業が取り組んでいます。
オウンドメディアを活用すれば、顧客ロイヤリティを高めながら広告宣伝費を削減できるため、効率的に見込み客の集客ができます。WordPressのようなCMS(コンテンツマネジメントシステム)を導入すれば、記事の作成・公開が簡単にできます。
質の高いコンテンツの継続的な発信は検索エンジンの評価を高め、上位表示される記事を増やします。発信したコンテンツが自社の資産になる点もオウンドメディアのメリットです。
2.SNSアカウントを開設し投稿を継続する
情報の発信だけではなく、ユーザーとの双方向コミュニケーションを図れるのがSNSの特徴です。近年では、自社によるSNSアカウント運用も不可欠になりつつあります。SNSは媒体によって特性とユーザー層が異なるので、戦略に適した媒体を選んで効果を高めていきましょう。
各SNSの特性は、下記のとおりです。
実名登録制を採用しているため、ターゲティング精度の高いマーケティングが実現します。メインユーザーの年齢層は30〜50代と高めです。商用利用する場合は「ビジネスアカウント」を作成したうえで運用する必要があります。アカウントの開設後は定期的に更新しながらフォロワーを獲得していきましょう。
瞬発性と拡散力の高いSNSです。ユーザーとの距離感が近く、顧客のファン化に利用できます。メインユーザーの年齢層が20〜30代と若いのもTwitterの特徴です。キャンペーンの告知に利用すれば、拡散力を活かしたフォローやリツイートによる参加者の増加が期待できます。なお、Twitterは個人アカウントとビジネスアカウントの区別がありません。
20〜30代の女性ユーザーが多いSNSです。他のSNSとは異なり、画像や動画の投稿に特化しています。ビジュアルで企業の世界観を訴求したい場合に最適な媒体です。ファッションや旅行、料理、インテリア関連のようなビジュアル映えする商材を扱っているのであれば、アカウントを開設しておきましょう。
・LINE
ユーザーの年齢層が幅広く、国内利用者数も最多のSNSです。企業と個人のクローズドなコミュニケーションを図れるため、実店舗を展開している企業の利用に適しています。100%に近いメールの到達率の高さはメールマーケティングにも向いているでしょう。商用利用には「LINE公式アカウント」の開設が必要です。
・YouTube
世界最大の動画配信プラットフォームです。10~50代の幅広い年齢層に利用されているため、公式チャンネルを開設する企業も増えてきています。SEOにも強く、ユーザーにとって有益な動画コンテンツは、Googleの検索結果上位にも表示されます。知識やノウハウを紹介する商材や、ブランディングに力を入れている企業は、YouTubeに公式チャンネルを開設しておきましょう。
・TikTok
15秒から3分程度のショート動画を投稿できるSNSです。ユーザーの年齢層が10〜20代に集中しているため、若年層をターゲットにした商材を扱う企業は注目しておきましょう。なお、TikTokを商用利用には「ビジネスアカウント」を開設する必要があります。
3.少額でリスティング広告を始めてみる
リスティング広告とは、検索キーワードに連動して検索結果に表示される広告です。検索ユーザーはニーズが明確になっているので、購買確度の高いユーザーへの訴求に適しています。
広告はテキストに限られますが、「広告表示オプション」を使えば各種情報やリンクを追加することも可能です。
リスティング広告について詳しく知りたい方は「Web広告を自社で運用する場合の工数と費用感」もご覧ください。
4.少額でSNS広告を始めてみる
少額でSNS広告を始めてみるのも、ひとつの方法でしょう。自社アカウントの運営とSNS広告の大きな違いは「即効性」です。
アカウントの運用はフォロワーの獲得に時間がかかりますが、広告では費用を支払えばすぐに露出ができます。なお、各SNSの特徴と商材との相性は先述した内容を参考にしてください。
【予算がある場合】5.Webマーケティング会社に同業種の成功事例を問い合せる
Webマーケティングに使える予算がある程度ある場合、検討している手法を得意としている企業に問合せをしてみましょう。リスティング広告なら広告運用実績の優れている会社、Instagramでの認知拡大を目指すなら、インフルエンサーマーケティングに強い会社などです。商談では、同業種や競合他社の成功事例を確認しましょう。
まずはアクセス解析ツールを導入、アクセス状況を見ながら施策を考える
Webマーケティングは「目的を明確にすること」から始まります。最終目標によって選択すべき施策や媒体が異なってきます。そして、施策の実施前に、解析ツールを導入して効果測定を行ない、課題の把握と改善を繰り返していきましょう。
シンプリックのSEO事業全体を監修。海外のマーケティングカンファレンスにも足を運び、最新のSEOおよびコンテンツマーケティング動向に精通。「競合が少なくコンバージョンを生み出せるキーワードの選定」「読みやすくロジカルな記事コンテンツの監修」を得意としています。
【実績】2005年に設立した株式会社ブルトア(サクラサクマーケティング株式会社)では、多数のクライアント、パートナー企業の検索エンジン集客に貢献し、SEO事業を年商7億規模に伸張させる。その後、設立した株式会社シンプリックでは、自社の海外通販事業を検索エンジンからの集客により2年で月商3000万規模に拡大。