広報とマーケティングの両方を兼任している担当者は、役割の違いに戸惑いながらも成果を求められる現場に立たされています。限られた時間の中で、「何を優先すべきか」「どうやって成果を見せるか」と悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、広報・マーケティングを兼任する担当者が業務を整理し、無理なく成果を出すための実践的な進め方をわかりやすく解説します。
目次
広報とマーケティングの違いとは
目的・KPIの違い
広報とマーケティングは、似たような業務に見えても根本的な目的が異なります。広報は「企業の信頼や認知の向上」を目的とし、媒体掲載、プレスリリース、社内報などを通じてブランドイメージを育てる活動です。一方でマーケティングは「商品やサービスの販売促進」が主眼であり、市場調査、広告などでリード獲得やコンバージョンを狙った施策を展開します。
この違いは、KPIにも明確に表れます。広報では掲載件数やSNSでの言及数、ポジティブな評判などが成果指標となるのに対し、マーケティングではCV数、CVR、CPA、ROASなど数値で管理される指標が重視されます。
役割と成果の出し方の違い
広報の役割は、中長期的なブランド価値の向上を目指すことです。企業に対する理解や信頼を獲得して、商品やサービスを購入してもらうという成果の出し方であるため、効果がすぐに現れにくく、定量評価が難しい領域です。これに対してマーケティングは、商品やサービスを購入してもらうために、顧客に直接的な価値の提供を行います。短期の成果にも直結しやすく、データを活用して改善を回せる領域です。
兼任担当者にとっては、それぞれの役割を明確に認識し、施策の目的や評価方法を分けて考えることが、混乱や疲弊を防ぐ第一歩となります。
| 項目 | 広報 | マーケティング |
|---|---|---|
| 主な目的 | 認知・信頼の向上、ブランド価値の形成 | 顧客獲得、販売促進 |
| KPI例 | 掲載件数、SNS言及数、好意度調査 | CV数、CVR、CPA、ROAS |
| 成果の性質 | 中長期的、定性評価が中心 | 短中期的、定量評価が中心 |
| 主な業務領域 | メディア対応、社内広報、SNS管理 | 広告運用、SEO、LP制作、メルマガ |
兼任体制にありがちな課題と失敗例
目標があいまいで成果が出にくい
広報とマーケティングはそもそも目的が異なるため、両者を同じ目標や指標で評価しようとすると、どちらも中途半端になりがちです。また、広報のKPIは定性的、マーケティングのKPIは定量的という違いもあります。たとえば、「SNSでフォロワーを増やしつつリードも獲得する」といったあいまいなゴールは、施策の設計もぼやけてしまい、実行に移しても手応えが得られません。
目標を明確に分け、KPIを役割ごとに設計することで、施策に集中できる体制が整います。
業務整理ができず優先順位がつけられない
「プレスリリースを出すべきか」「広告のLP改善を急ぐべきか」といったように、日々のタスクに追われて戦略的な判断が後回しになるケースが多く見られます。特に兼任担当者は、割り込み依頼が多く、業務の優先順位を見失いやすい状況にあります。
このような状態を回避するには、業務を「重要×緊急」で仕分けし、月単位の計画を立てて管理することが有効です。
社内連携・理解の壁
兼任担当者は、複数部署と連携する機会が多いため、誤解や情報の断絶が生じやすいポジションでもあります。広報案件では経営層、マーケティングでは営業部や商品開発部との連携が必要となることが多く、部署間の理解度が低いと、作業の遅延や目的のズレが発生します。
こまめな進捗共有や「この施策は誰のため、何のためか」を説明できるコミュニケーションが重要です。
兼任でも成果を出すための進め方
まずは業務を目的別に分ける
兼任担当者にとって最も重要なのは、広報とマーケティングそれぞれの目的を軸に業務を分類することです。たとえば、「認知向上」は広報、「顧客獲得」はマーケティングといった具合に分け、施策を紐づけます。
この目的ベースの分類により、優先順位の判断や施策の選定がしやすくなり、業務のブレが減少します。さらに「目的」と「施策」の関係性を図で可視化すれば、社内理解の促進にも役立ちます。
施策ごとのKPI設計とモニタリング
施策には必ず目的に即したKPIを設けましょう。KPIは数値で把握できる、かつ定期的に見直しができる指標が望ましいです。たとえば、以下のように設定できます。
- プレスリリース→メディア掲載件数、被リンク獲得数
- メルマガ→開封率、クリック率
- LP改善→CV率、滞在時間
施策ごとの適切なKPI設計とGoogleサーチコンソールやアナリティクスを活用したモニタリング体制を整備することで、PDCAを効果的に回せます。
情報共有と巻き込みの仕組みづくり
成果を出すには、社内外の関係者とのスムーズな連携が欠かせません。そのためには「定例の情報共有の場」「施策別のステークホルダーの明確化」が効果的です。定期的に情報共有の場を設けることで、施策の進捗報告とともに今後の進め方を細かく確認できます。
また、プロジェクト管理ツール（Backlog、Notion等）やGoogleスプレッドシートなどを活用し、施策の背景・目的・担当を明記したシートを共有することで、社内の巻き込みがしやすくなります。
取り組みやすいWebマーケティング施策とは？
即効性より「継続性」と「再利用性」を重視
兼任担当者にとって重要なのは、一度きりで終わらない“資産型”の施策です。たとえば、SEOを意識したブログ記事やお役立ち資料の制作などは、公開後も継続的に効果を発揮し、SNSやメルマガでも再利用しやすい点がメリットです。
一方で、リスティング広告などは即効性がある反面、毎月の運用・改善に時間を取られる可能性があるため、体制が整うまでは慎重に取り組むべきです。
兼任でも回しやすい「型化された施策」が鍵
属人的なノウハウやゼロから考える必要がある施策は、継続が難しくなりがちです。そのため、テンプレート化・ルーティン化しやすい施策を選ぶことが推奨されます。
たとえば、以下のような施策が挙げられます。
- 月1回のコラム配信
- サービス紹介用SNS投稿フォーマットの活用
- イベント告知→レポート→再利用の一連フロー
このような、仕組みとして再現性のある施策を選ぶことで、業務効率が大幅に上がります。
成果が見えやすく社内報告しやすい
兼任担当者が評価されるためには、施策の成果を「見える化」しやすいことも重要です。Googleアナリティクスやサーチコンソールを用いたレポート、SNSのインサイト画面、メルマガの開封率レポートなどを活用しましょう。
社内向けに「先月比」や「前回施策との比較」などを簡易にまとめるだけでも、周囲の理解と支援が得やすくなります。
| 施策 | 特徴・取り組みやすさ | おすすめ理由 |
|---|---|---|
| SEOブログ記事 | 資産型・継続的に効果 | 再利用・計測可能 |
| メルマガ（テンプレ化） | 定期化しやすい・リーチを維持しやすい | 社内向けにも応用可能 |
| SNS投稿 （曜日＋内容で定型化） | 毎週の運用がルーチン化しやすい | 少ない労力でファン維持 |
| ホワイトペーパーの配布 | 資料1つで複数チャネルに展開可能 | 資産活用・リード獲得にも応用可能 |
| Googleビジネスプロフィール更新 | 地域密着型企業に最適・低コストで始めやすい | 放置されやすいが効果が安定して高い |
外部支援を活用するという選択肢
広報・マーケ分野で頼れる業者の違い
外部業者にもそれぞれ得意分野や支援スタイルの違いがあります。広報に強い業者は、メディアネットワークや記事構成力、プレス対応の知見に優れています。一方で、マーケティング系の業者はSEO、広告、LP制作、アクセス解析などの実行力が高い傾向にあります。
兼任担当者としては、「自分ではできない部分を補ってくれるか」「施策提案から実行まで任せられるか」を判断基準にしましょう。
兼任担当者に合う支援形態とは
兼任業務を支援してもらうには、“伴走型”かつ“小規模から始められる”業者との連携が理想的です。以下のような支援形態は、現実的かつ実用的です。
- 月額3〜5万円程度から始められるレポート＋改善提案型支援
- プレスリリース1本から相談可能なスポット広報支援
- コンテンツ制作のみ外注し、戦略は自社で設計するハイブリッド運用
業務の内製・外注のバランスを取りやすいプラン設計が可能な業者を選ぶことで、無理のない継続が実現します。
| 観点 | 広報支援会社の特徴 | マーケ支援会社の特徴 |
|---|---|---|
| 主な支援内容 | メディアアプローチ、取材調整、PR戦略 | SEO、広告運用、Web制作、改善提案 |
| 契約形態 | スポット〜月額固定 | 成果報酬型・月額運用型が多い |
| 向いている業務 | 認知拡大、ブランディング、社内外広報 | 集客、リード獲得、コンバージョン最適化 |
| 兼任との相性 | 上層部報告や企業認知に貢献しやすい | 数値成果での報告や提案力に強み |
| 検討時の注意点 | 媒体リストの透明性、費用対効果 | 実行力だけでなく戦略設計力を要確認 |
まとめ
広報とマーケティングを兼任する担当者は、役割の違いを理解したうえで、業務を整理・分担し、限られたリソースの中で成果を出す工夫が求められます。目的別に業務を分け、施策ごとにKPIを設計し、継続しやすく再利用できる施策を選ぶことが、兼任体制での成功の鍵です。
さらに、自分一人で抱え込まず、外部の専門家をうまく活用することも重要な選択肢のひとつです。
シンプリックでは、兼任担当者の課題に寄り添い、成果と効率の両立を支援する伴走型支援を行っています。広報・マーケティングの兼任でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
