Googleの強さはどこにありグーグルはどこに向かうのか

2023年9月7日の正午より、日本経済新聞が運営するNIKKEI LIVEにて、「Google25年、ネットの巨人の未来を読む」という配信がありました。2003年にグーグル本社に日本人初のプロダクトマネージャーとして入社され2022年まで在籍された徳生 健太郎さんが出演。インタビュー形式で進められた配信を聞き感じたGoogleの強さと今後のグーグル検索の向かう先を考えていきたいと思います。

Googleの強さはどこにあるのか

まずは以下のデータを見てください。

Googleが提供するサービス全世界での利用者数
Googleサーチ43億人
Android OS33億人
YouTube27億人
G suite(旧Google Apps)20億人
Google Map10億人

YouTubeやGoogle Mapなど買収をしたサービスもありますが、10億人以上の人が利用するサービスをこれだけ生み出しているのは、本当にすごいことです。

Googleが提供するサービスはまだまだあります。以下はGoogle公式のプロダクトページで紹介されているサービスの一部です。

これだけ多くのサービスを生み出すこと、また買収したサービスを改良し、多くの人が利用するサービスに育てるのは簡単なことではありません。

徳生さんのお話を聞き、Googleの強さはその組織体のアイデンティティにあると感じました。私は、以前サンフランシスコに住んでいたことがあり、グーグル本社を訪れたことがあります。シリコンバレーの空気やそこでのGoogleの存在感を思い出しながら、書いていきたいと思います。

ミッションステートメントからブレない

Our company mission is to organize the world’s information and make it universally accessible and useful.
「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」

https://about.google/

上記はGoogleの有名なミッションステートメントです。徳生さんが真っ先に口にしていたGoogleの強さは、ミッションステートからブレないこと。どの社員もこの言葉を暗記しており、常に意識して働いている。Googleの存在自体がユーザーファーストであるわけです。多くのユーザーに使われるということは、ユーザーが潜在的に求めているサービスを提供していることに他なりません。

建設的な議論が常に行われる風土

徳生さんが入社した2003年当時、すでに革新的な検索サービスとして注目されていたGoogle。2人の創業者、セルゲイブリン、ラリーページはスタンフォード大学出身ということもあり、インテリ的な上から目線の入社面談ではないかと想像する人もいるでしょう。徳生さんもそのように考えていたようです。

実際の入社面談は、「このことについてどう考えるか?どのようにしたら良いか?」といった実務的な議論の場であり、また、当時のGoogleメンバーは少し話をしただけでも、非常に優秀であったと。「ここに入ったら必ず成長できる」「他の会社には興味が持てなくなった」という徳生さんの言葉は印象に残ります。

本質、つまり「ユーザーにとって必要なことは何か」ということが常に議論されている組織であるからこそGoogleはここまで躍進してきたのでしょう。

先進的な働き方

シリコンバレーの他のテック企業と比べた際に、社員にとって働きやすい環境をGoogleは先駆けて提供してきています。20%ルール(業務時間の20%は、新しいことに取り組む時間にあてる)はGoogleの働き方の象徴となるものです。

徳生さんは、無料の食堂を提供する効用について強調していました。数千人のスタッフが車でランチに出かけ戻ってくる時間をコストとして計算すると膨大な額になります。社内に無料で食べられる食堂があれば、移動の時間は必要ありませんし、食べたらすぐ仕事に戻ることもできます。

私は2012年にグーグル本社を見学しました。マウンテンビューという人口10万人に満たない街にグーグル本社はあります。広い敷地内をいろいろと見学させてもらいましたが、食堂だけではなく、遊び心のある空間やスペースがさまざまな場所にありました。自転車を漕いで自家発電できる装置など。

徳生さんは、デスクと椅子しかない殺風景なオフィスと比べた時に、さまざまな遊び心のある空間は、スタッフが余裕を感じられるファシリティとなり機能していたと振り返ります。

ユーザーのことだけではなく、本気でスタッフの働きやすさを考えていたからこそ、Googleには優秀な人材が集まり生産性を発揮してきたことがうかがえます。

Googleはどこに向かうのか

2000年前後に普及したGoogle検索はいまや世界で43億人に利用されています。インターネット利用ユーザーの著しい増加に伴い、広告のネット比率は55.8%と飛躍的に伸びています。ただし、その浸透に伴い、Googleの収益の柱である検索関連広告の売上成長率は鈍化しています。ネット広告の成長鈍化にGoogleはどのように対応していくのでしょうか。

検索連動広告以外の売上を伸ばす

2022年第3四半期のGoogleの親会社Alphabetの売上構成は以下のとおりです。

提供サービス売上額比率
Google検索関連(Google Search&other)395億3900万ドル(約5兆8700億円)57%
YouTube広告(YouTube ads)70億7100万ドル(約1兆500億円)10%
Googleのネットワーク関連(Google Network)78億7200万ドル(約1兆1700億円)11%
Googleのその他(Google other)68億9500万ドル(約1兆200億円)10%
Google Cloud関連(Google Cloud)68億6800万ドル(約1兆200億円)10%
Alphabetの投資関連(Other Bets)2億900万ドル(約310億円)1%
ヘッジ利益(Hedging gains)6億3800万ドル(約950億円)1%
出典:GIGAZINE

検索関連以外の売上合計が約4兆3860億円のため、検索関連の売上は57%を占めています。他の事業はいずれも10%程度ですので、Googleは検索広告の売上に頼っている状況を変えていく必要があります。ただし、ここから5年・10年というスパンでは、さらにGoogle検索のユーザー利便性を進化させ、検索関連広告の売上を維持向上させるために力を入れてくるのは確実でしょう。

検索エンジンを進化させる

2023年8月30日に、「SGE(Search Generative Experience)」の試験運用が日本でも開始されました。2023年5月10日に「GoogleI/O」で発表され、米国では既に提供が開始されていました。

SGE(Search Generative Experience)とは

SGEとは、生成AIによる回答を検索結果に表示させるものです。

これまでとの最大の違いは、検索結果に直接回答が表示されるため、検索結果に出力されるページを開かなくても、疑問や悩みが解消される点です。

To provide access to the world’s information in one click.
ワンクリックで世界のあらゆる情報にアクセスできるようにする

SGEの導入は、まさに上記のGoogleビジョンに適うものです。ユーザーが情報にアクセスするまでの時間や工程を最小化する取り組みのひとつといえます。

検索体験を進化させ、よりユーザーにとって利便性の高い検索環境を整えることは、検索ユーザーの維持向上につながり、広告売上を守ることにつながります。Googleは今後も検索体験を進化させていくことは間違いないでしょう。

Googleの強さはDNAに刻み込まれている

徳生さんのウェビナーは、Googleの強さに改めて触れる機会となりました。

提供サービスの利用者数からも分かるように、情報社会の中心にGoogleはいます。
膨大に押し寄せる情報の波からユーザーを守ることがGoogleのミッションであり、ブレずにその活動を続ける限りはGoogleの地位は揺るがないだろうと思います。

SGEの試験運用が日本でも始まりましたが、Googleは検索サービスにおいても、進化の手を止めないでしょう。一事業者として、価値ある情報コンテンツの提供にこれからも努めたいと思います。

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