カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを購入するまでのプロセスを可視化し、チーム内における認識や課題を明確にできるツールとして、コンテンツマーケティングなどマーケティング活動を検討する際に活用されています。
現代のビジネスにおいて、製品やサービスを提供するだけでは顧客満足度を維持できません。顧客に価値ある体験を提供するためには、購買プロセスを網羅的に捉え、俯瞰した対策が必要です。
本記事では、カスタマージャーニーマップの目的や作成のメリット、具体的な作成手順について詳しく解説していきます。
「どのタイミングでどんなコンテンツ・情報を届けるか」を決める上でカスタマージャーニーマップの作成は効果的ですが、これはコンテンツマーケティングを実践する際に特に重要な工程です。以下の記事で基礎知識を網羅的に解説しているため、コンテンツマーケティングの理解が浅いと感じている場合はぜひお読みください。
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目次
カスタマージャーニーマップの目的とメリット
まずは、カスタマージャーニーマップを作成する目的とメリットを詳しく見ていきましょう。主なメリットは以下のとおりです。
- 顧客のニーズを把握できる
- 顧客体験が向上する
- チーム内の認識が共有される
- 課題の優先度を確認できる
- フェーズごとにアプローチできる
それぞれ解説していきます。
顧客のニーズを把握できる
カスタマージャーニーマップは購買プロセスを視覚化できるため、各過程におけるニーズが明確になります。いわば顧客のインサイトを深く理解することが大切で、これができなければ、顧客が求めている商材の開発とマーケティング施策の展開は不可能です。
昨今の購買プロセスは、インターネットやSNSの普及によって複雑化・多様化しています。カスタマージャーニーマップを作成すれば、商材に関わる「タッチポイント」を基準にさらなる理解が進められます。自社の商材とユーザーにカスタマイズされた手法の考案にも役立つでしょう。
顧客体験が向上する
カスタマージャーニーマップは顧客の感情や思考を詳細に把握でき、具体的な課題や解決策の発見にもつながります。
くわえて、ペルソナの設定で不足する要素を補完しながら顧客体験(CX)を向上させることも可能です。顧客に魅力的な体験を提供できれば、競合他社との差別化にもつながります。
チーム内の認識が共有される
カスタマージャーニーマップの作成は、チーム内におけるマーケティング戦略・顧客視点の認識の共有にも役立ちます。
カスタマージャーニーは複雑なため、細部の認識が異なってしまうケースは少なくありません。わずかな認識の違いも、商品開発やマーケティング施策の展開には大きな影響を与え得るため、注意が必要です。
このような弊害を防ぐためにも、カスタマージャーニーマップを利用した認識の共有、施策の精度向上が重要といえます。共通認識が一貫していれば、チーム内コミュニケーションの円滑化とスムーズな問題解決が実現するでしょう。
課題の優先度を確認できる
カスタマージャーニーマップの作成は、各フェーズにおける優先課題の明確化も実現します。チーム内の認識が共有されるため、改善点や課題解決に向けた具体的なアクションプランも迅速に立案できるでしょう。
当然、マーケティングの予算や人的リソースには限りがあります。しかし、カスタマージャーニーマップを作成することで、展開すべき施策を選択できるようになり、成果の最大化が望めます。
フェーズごとにアプローチできる
顧客の購入プロセスを可視化できるカスタマージャーニーマップの作成によって、各フェーズにおける最適なアプローチも採択できます。ニーズの多様化が進んでいる近年では、フェーズごとに戦略を変えるのが基本です。
各フェーズのアプローチを整理すれば課題もセグメントでき、コンバージョン数の増加も期待できます。とくに、SEO施策を展開する場合は「誰」に対して「何」のアプローチをしているのかを明確にしましょう。
カスタマージャーニーマップの作成方法
カスタマージャーニーマップは、以下の手順で作成します。
- ターゲット(ペルソナ)を明確にする
- 購買プロセスを定義する
- ペルソナの行動とタッチポイントを検討する
- ペルソナの感情を整理する
- 対応策を設定する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.ターゲット(ペルソナ)を明確にする
まずはターゲットの顧客像を設定します。カスタマージャーニーは自社の商材を認知していない段階から考える必要があるため、ターゲットをペルソナのレベルにまで落とし込むことが大切です。
ユーザーの年齢・性別・職業だけでなく、趣味やライフスタイルなども想定して作成しましょう。
ニーズを正確に把握するためにもペルソナの設定は欠かせません。ペルソナによってターゲットが明確になれば、購買プロセスも想定しやすくなります。
ただし、細かく設定しすぎると非現実的になる恐れがある点は注意が必要です。カスタマージャーニーマップ作成中は、不自然な部分が見つかり次第改善できるよう、ある程度の余剰を残しておきましょう。
ペルソナの設定方法については、以下の記事でより詳しく解説しています。
2.購買プロセスを定義する
次に、購買プロセス(フェーズ)を定義します。購買プロセスとは、ユーザーが商品やサービスを購入するまでの流れです。一般的にはニーズを認識する段階から、商品やサービスの選択・購入までの過程を表します。
具体的な購買プロセスは商材の種類や特性によって変わりますが、今回は「健康食材の定期宅配サービス」を例に作成します。
なお、BtoBのカスタマージャーニーマップを作成する場合は「課題の認識」から「継続利用とアップグレード」までを定義するのが一般的です。
3.ペルソナの行動とタッチポイントを検討する
次に、縦軸となる「行動」と「タッチポイント」を検討します。設定したペルソナの行動を想定し、適切と思われるタッチポイントを設定しましょう。
初期接点や検討プロセスは企業目線だと気づけないケースも多いため、注意が必要です。過去の体験想起や思考が最終決定の大きなポイントになっていることもあります。
いずれにしても、現実に即した顧客接点を捉えるには「顧客を対象とした調査」を活用する必要があるでしょう。
4.ペルソナの感情を整理する
次に、各プロセスにおけるペルソナの感情を整理します。事前に定性的なリサーチができれば理想ですが、抽象的な指標を入れても構いません。
ポジティブやネガティブなどの感情で分けるのも、ひとつの方法でしょう。ただし、憶測だけで記載しないよう注意する必要はあります。
5.対応策を設定する
最後に、各プロセスにおける対応策を設定して完成です。各プロセスの対応策がひとつとは限りません。想定される対応策をすべて落とし込み、的確に行動できるようにしましょう。
カスタマージャーニーマップ作成と活用の注意点
ここからは、カスタマージャーニーマップの作成と活用時の注意点を確認していきましょう。基礎的なところですが、それゆえに重要なポイントです。
憶測だけで作成しない
カスタマージャーニーマップ作成は「ユーザー目線」が大前提です。企業の希望や憶測で作成してはいけません。担当者には少なからずユーザーに対して先入観があります。しかし、それが反映されたジャーニーは現実と乖離している可能性が高い傾向にあります。
ユーザーの現実的な行動は、以下のような情報から判断しましょう。
購買プロセス | 情報元 |
---|---|
初期接点 | 自社アンケートやヒアリング |
購入検討まで | 自社サイトデータ |
購入まで | 外部データ(比較サイトなど) |
購入後 | SNSの投稿やユーザーレビューなど |
自社の希望はユーザーの態度を変容させません。重視すべきは「ユーザーの現実的な行動」であることを忘れないようにしましょう。
作成して終わりにしない
充実度の高いカスタマージャーニーマップを作成しても、活用しなければ意味がありません。また、カスタマージャーニーマップを作成する理由が「他社も作成しているから」「なんとなく効果がありそうだから」では成果につながりません。実運用に役立てるためにも、活用方法とゴールを明確にしておきましょう。
定期的に改善する
ユーザーの思考や行動は常に変化しています。そのため、定期的な見直しと改善が必要になります。改善期間に明確な決まりはありませんが、最短で半年、長くても1年ごとに再調査・再検討をすれば現実とのギャップが少なくなります。
カスタマージャーニーマップ作成に役立つツール
支援ツールを活用すれば、カスタマージャーニーマップの作成時間と手間を省けます。ここでは、主なツールを3種類紹介します。
Marketing Cloud
SalesforceのMarketing Cloudには、カスタマージャーニーの作成と管理を支援する「Journey Builder」が含まれています。さまざまなタッチポイントにおける顧客とのエンゲージメントを促進するため、顧客データを統合してパーソナライズされたマーケティングコミュニケーションの実現も可能です。
Lucidchart
「Lucidchart」はクラウドベースのグラフィックデザインソフトウェアですが、ドラッグ&ドロップだけでカスタマージャーニーマップが作成できるツールが備わっています。豊富なテンプレートや図形を活用できるだけではなく、チームメンバーとの共同作業にも対応しているため、業務の効率的にも役立つでしょう。
Miro
オンラインホワイトボードツール「Miro」は、カスタマージャーニーマップ作成に役立つ多彩なツールやテンプレートを備えています。オンライン上での同時作業にも対応しているので、リモートワークに最適です。
カスタマージャーニーマップの活用事例
ここからは、カスタマージャーニーマップの活用事例から確認しておきたいポイントを紹介していきます。ここでは3つの企業の例を紹介します。
三井住友銀行
出典:三井住友銀行「デザインチームが推進するカスタマージャーニーマップ・マネジメント」
三井住友銀行では、全体の一貫管理を目的としたカスタマージャーニーマップ「CJMM(Customer Journey Map Management)」を作成しています。
マップをマネジメント手法として採用することにより、各ビジネス部門が個別に最適化する傾向を排除しました。顧客視点に寄り添ったアイデアや施策展開も実現しています。
LANCOM
出典:LANCOM「How Ecommerce Brands Can Create a Conversion-Powered Customer Journey Map│the good」
化粧品メーカーのLANCOMもカスタマージャーニーマップを活用しています。作成の目的は「ブランドエクスペリエンスの向上」で、顧客の疑問を網羅的に把握しながら、円滑な体験を提供できるようにしています。
購買プロセスを「たどり着く途中(On my way)」「LANCOMを知る(Getting Lancome)」「経験の共有(Share experience)」と独自に定義しているのも特徴です。各ステージには、タッチポイントとするメディアや展開する施策などがマッピングされています。
Rail Europe
出典:Rail Europe「Anatomy of an Experience Map」
Rail Europe(レイルヨーロッパ)は北米の旅行代理店です。同社では、サービス向上を目的としたカスタマージャーニーマップを作成しています。
旅行における顧客の行動を可視化したうえで、ペルソナのステージやタッチポイント、思考・感情体験などの洞察と改善点をまとめているのがポイントです。
【まとめ】カスタマージャーニーマップを活用し目的を達成しよう
カスタマージャーニーマップの目的や作成方法などについて詳しく解説しました。カスタマージャーニーマップを作成すれば、顧客が商品やサービスを知るきっかけや購入の意思決定、利用後の満足度など、顧客体験を深く理解できるようになります。
自社の商材とユーザーに合致したカスタマージャーニーマップを作成して、成約率の向上を目指しましょう。
弊社シンプリックでは、カスタマージャーニーマップの作成からお客様に伴走し、記事制作支援などお客様に有効な施策をご提供しています。ぜひ無料相談をご活用ください。お客様の現在抱えている課題や今後取り組もうとしていることなどをヒアリングしたうえで、弊社がどのような支援をできるかご説明させていただきます。