自社サイトやブログなどのオウンドメディアを運用する際は、運用における具体的な目標を設定することが大切です。オウンドメディアの目標を設定する際は、「KPI」や「KGI」という指標について知っておくと目標を設定しやすくなります。
本記事では、オウンドメディアの目標設定における重要な指標である「KPI」について解説します。オウンドメディアを運用する際は、KPIの概要を理解して売上アップなどの最終目標(KGI)の達成を目指しましょう。
目次
オウンドメディアとは
オウンドメディア(owend media)とは、「自社が保有(owend)しているメディア」のことです。自社が保有していることから、外部に対して自由に情報発信を行うことができるWeb集客の重要なツールです。
オウンドメディアの定義は様々ですが、ブログサイトやコーポレートサイトなどの「Webメディア」を指してオウンドメディアと呼ぶことが多いです。
例えば今見ているこのサイトは、会社の情報を伝えるための「コーポレートサイト」の機能と、記事を通して読者に役立つ情報を伝える「ブログサイト」の機能の両方を持ち合わせています。そのため、このサイトは「オウンドメディア」です。
実際、オウンドメディアの多くは「ブログサイト」の機能を持っています。読者に役立つ情報を伝えるブログ記事数を増やすことで多くのアクセスを集め、Web上からの商品販売や問い合わせの獲得、また企業のブランディングなどにつなげます。
そのため、この記事では「オウンドメディア = ブログ機能を持ったWebメディア」の定義で解説します。
以下の記事で「オウンドメディアとは何か」を2万文字以上にわたって詳しく解説しているため、理解を深めたい場合はぜひお読みください。
KPIとは
「KPI(重要業績評価指標)」とは、大目標を達成するための中間目標のことです。大目標までの到達率や進捗把握のために設定する指標で、原則「数値で」設定されます。
KPI(中間目標)を達成し続けることで、大目標を達成できます。KPIを設定しない場合、大目標の達成に向けてどれくらい進んでいるかが分かりません。そのため、大目標を達成できる可能性は大幅に下がります。
「KPIを設定しない」ということは、「失敗を計画している」ようなものです。
大目標を「3年以内にオウンドメディア経由で年間200件の問い合わせを獲得できるようにする」とした場合、KPIは例えば以下のように設定できます。
- 1件の問い合わせ獲得には「1,000件」のアクセスが必要であるため、年間200件の問い合わせ獲得には「200,000件」のアクセスが必要
- つまり月間「25,000件」のアクセスが必要
「3年以内に年間200件の問い合わせ獲得」という大目標だけ設定しても、具体的に何をするべきかが分かりません。しかし「月間25,000件のアクセス獲得」というKPI(中間目標)を設定すれば、やるべきことが少しずつ見えてきます。
これで、オウンドメディア運営にKPI設定が必須であることを理解できたかと思います。改めて、「KPIを設定しない」ということは「 失敗を計画する」ことと同じです。必ず設定するようにしましょう。
KPIの前に、「KGI」を設定するべき
オウンドメディアの集客を成功させるためには、KPIの設定が必須です。しかし、KPIは「KGI」がないと設定できません。
「KGI(重要目標達成指標)」とは、大目標のことです。つまり、最終的に達成したい目標です。このKGIを達成するために、中間目標としてKPIを設定する必要があります。
KGIは、オウンドメディアの運営を通して達成したい具体的な目標です。例えば、「3年以内にオウンドメディア経由で年間200件の問い合わせを獲得できるようにする」などがKGIです。
KGI(大目標)とKPI(中間目標)を設定することで、企業・チーム内で「目指すところ」を共通意識として持つことができ、目標達成のためにモチベーション高くオウンドメディアを運用することができます。
オウンドメディアでKPIを設定するべき理由
先ほどのKPIについての説明時にもお伝えしましたが、オウンドメディアではKPIの設定が必須です。ここでは、オウンドメディアでKPIを設定するべき理由を3つ紹介します。
1. KGIの達成確率が上がる
KPIを適切に設定することで、最終的に達成したい大目標(KGI)の達成確率が上がります。
小学生が「将来プロ野球選手になる」という大目標(KGI)を達成するためには、「中学生で全国大会に出場する」「高校で甲子園に出場して活躍する」といったように中間目標(KPI)を設定することが大切でしょう。
「KGIを設定し、達成のためにKPIを設定する」というのは、いわば「目標達成の原則」です。適切に目標を設定し、目標達成のために工夫して取り組み達成を継続することが、大きな目標達成につながります。この原則はオウンドメディアでの集客を成功させるためにも大切です。
2. 行動計画が明確になる
KPIを適切に設定することで、行動計画が明確になります。
行動計画とは、「目標を達成するために必要な行動の計画」です。例えば「月間25,000件のアクセス獲得」というKPIを達成するために、以下のような行動計画を立てられます。
- 他の企業が運営している、アクセス数が月25,000件程度のオウンドメディアを2週間かけて調査し、運営方針を定める
- ブログ記事をまずは半年間、毎月15本公開する
- すでに公開済みのブログ記事を、より読者に有益な情報となるよう書き直す
これらはあくまで一例ですが、「月間25,000件のアクセス獲得」というKPIを達成するために、「ブログ記事をまずは半年間、毎月15本公開する」という行動計画を立てられれば、実際にすぐ行動を起こせます。
KPIやKGIを設定しないと、行動計画は立てられません。そもそも「計画」とは、目標を達成するために作るものだからです。目標がない状態で「ブログ記事をまずは半年間、毎月15本公開する」といっても、それは計画ではなく、行き当たりばったりの無謀な行動です。
3. 取り組みに対する社内理解を得やすくなる
KPIを適切に設定することで、オウンドメディア集客のための取り組みに対する社内理解を得やすくなります。
そもそもオウンドメディアの集客を成功させるためには、ある程度の期間が必要です。1〜3ヶ月程度で多くのアクセスを集められるような状態になることはほとんどなく、少なくとも半年、多くの場合1〜2年といった期間を要します。
短期的に目に見える成果が出づらいオウンドメディア運営は、取り組みに対する社内理解が得づらいです。そのため、オウンドメディアでの集客に失敗する原因として多いのは、「成果が出るまで継続できなかった」というものです。
しかし、例えばオウンドメディア経由で年間200件の問い合わせを獲得できるようになれば、これは社内の多くの方にとって嬉しいはずです。特に、経営陣にとっては直接会社の利益につながるものであるため、もしオウンドメディア運営によりこのような成果が得られるのであれば、何としてでも取り組みたいと思うでしょう。
「年間200件の問い合わせ獲得」というのはKGIですが、中間目標としていくつかKPIを設定し、KPI設定のための具体的な行動計画を作り、「毎月、これくらいのリソースを投下して、このような施策に取り組めば、3年以内に年間200件の問い合わせが入ってくる状態を作れます」と根拠を持って説明ができれば社内からの理解を得られ、継続的にオウンドメディアを運営できる可能性が高まります。
社内理解が得られない状態でオウンドメディアを運営しても、成果が出る可能性は低いです。オウンドメディアの運営は、会社一丸となって取り組むべきものです。社内理解を得るためにも、KPIは確実に設定しましょう。
オウンドメディアの代表的なKPI
ここまで、KPIを設定することの重要性をお伝えしました。オウンドメディアの集客を成功させるためには、KPIの設定が必須です。しかし、オウンドメディアで設定すべきKPIにはどのようなものがあるか、把握できていない方もいるでしょう。
ここでは、オウンドメディアで設定すべき代表的なKPIを紹介します。
記事数:サイトの入り口を増やし、ドメインを強化するために
オウンドメディアで成果を出すための要となるのが、「ブログ記事」です。記事数を増やすことで、様々な記事からアクセスが入ってくるようになり、サイト全体のアクセス数が上がります。また、記事数を増やすことでサイト全体(ドメイン)が検索結果で表示されやすくなります。
しかし、読者にとって有益といえないような質の低い記事を公開し続けても、アクセスは集まりません。むしろ、「このサイトは読者にとって有益でない記事を公開している」とGoogleから判断され、検索結果でサイト内のページがヒットしないようになる恐れがあります。読者にとって価値のある、質の高い記事を増やすことに注力しましょう。
「毎月15本の記事を公開する」といったように具体的な数値でKPIを設定します。また、記事数をKPIとして設定する際は「実現可能な本数」にしましょう。あまりにも多すぎる本数を目標にすると継続できないどころか、質の低い記事が量産され、全くアクセスを集められずに投下した時間・コストが無駄になってしまう可能性があります。
オウンドメディアの立ち上げ初期は「どれくらいの本数、記事を公開すればいいか」と悩む人が多いです。以下の記事で記事数について詳しく解説しているため、興味があればぜひお読みください。
SEOと記事数は関係ある?SEO効果の高い記事の増やし方も解説
検索順位:検索結果での表示回数を増やすために
対策キーワードで検索した際の、記事の検索順位をKPIとして設定しましょう。
Googleでキーワードを入力して検索した際に、1ページにつき10件の検索結果が表示されますが、この中でより上のほうに表示されるよう対策することを「SEO対策」といいます。
検索結果で上のほうに表示されるほど、より多くのアクセスが入ってきます。そのため、各記事が検索結果で上位に表示されるよう対策し、検索結果での表示回数を増やすことが大切です。
通常、オウンドメディア内で公開する記事には、それぞれに「対策キーワード」というものを設定します。「どのキーワードで検索された際に、記事を上位表示させたいか」を決めることで、対策キーワードにおける記事の検索順位をKPIとして設定できるようになります。
対策キーワードを決めずに記事を作成した場合、上位表示させたいキーワードが決まっていないため、検索順位をKPIとして設定できません。
以下の流れで記事作成を行うことで、検索順位をKPIとして設定できるようになります。
- 対策キーワードを決める
- 対策キーワードで上位表示されるように記事を作成する
- 記事を公開してから3ヶ月後以降に、検索順位がどうなっているかを確認する
- 必要に応じて記事をリライトし、目標の検索順位(KPI)の達成を目指す
リライトとは、成果が出るように記事を書き直すことです。
このように、KPIを設定した後に、KPIが達成できているかを適宜確認し、達成できていない場合は改善するということを繰り返すことで、KPIの達成可能性を上げられます。
CTR:検索結果に表示された後のクリック率を増やすために
「CTR」とは、「検索結果で表示された回数のうち、クリックされた回数の割合」です。KPIとして設定し、改善し続けることでサイトにより多くのアクセスを集められます。
Googleでキーワードを入力して検索を行うと、以下のように検索結果が表示されます。
2023年1月22日現在、「seo キーワード 設定」というキーワードで検索すると2位に弊社オウンドメディアの記事がヒットします。
例えばこのキーワードで検索して、検索結果画面でヒットしたページタイトルを見たユーザー数が「200」だとし、そのうち「20」回ページタイトルのリンクをクリックしてアクセスした場合、ページのクリック率(CTR)は「10%」になります。
CTRは、以下の計算式で求められます。
先ほどの例でいうと、「クリック数(20) ÷ 表示回数(200) × 100 = 10%」になります。
CTRが2倍になれば、単純にアクセス数も2倍になります。検索結果に表示されるページのタイトルや説明文をより検索ユーザーの興味の惹くものにすることで、CTRを上げられます。検索上位であるにもかかわらずCTRが高くない場合、アクセスを取りこぼしている非常にもったいない状況です。
CTRを上げるためのタイトルの付け方については、以下の記事でより詳しく解説しています。
PV:サイト内のページをたくさん見てもらうために
「PV数」とは、「サイト内のページが開かれた数」のことです。つまり、「アクセス数」です。
PV数が多いほど、サイト内のページにたくさんアクセスされているということであり、オウンドメディア集客において非常に大切な指標の一つです。
PV数と、後ほど紹介する「CV数(商品購入や問い合わせなどの具体的な成果)」は、比例します。基本的にPV数が多いほどCV数も多くなるため、オウンドメディアから成果を獲得したいのであれば、PVはKPIとして設定するべきです。
UU:多くのユーザーに訪問してもらうために
「UU数(ユニークユーザー数)」とは、特定の期間内にサイトにアクセスしたユーザーの数です。同じユーザーが特定の期間内に何回もサイトにアクセスした場合でも、UU数は「1」となります。
PV数とUU数の違いが分かりづらいため、以下の図で具体的に説明します。
特定の期間内(例えば1日)に、Aさんがサイトに1回訪問し、Bさんがサイトに2回訪問したとします。同じユーザーが特定の期間内に何回サイトに訪問した場合でも、UU数は「1」とカウントされます。
そのため、この場合のPV数(サイト内のページが開かれた数)は「3」ですが、UU数は「2」となります。
オウンドメディアのUU数が増えているということは、サイトの認知度が上がっているということです。同じユーザーがサイト内のいくつかのページを開く可能性があることから、PV数は必ずUU数以上となります。
平均ページ滞在時間:記事を最後まで読んでもらうために
「平均ページ滞在時間」とは、ユーザーが1つのページを閲覧していた時間の平均です。
サイト内のあるページから、別のページにアクセスするまでの時間をページ滞在時間として測定し、仮にサイト内の1ページだけを閲覧してサイトから離れた場合は、滞在時間は「0秒」とカウントされます。
平均ページ滞在時間をKPIとして設定することで、ユーザーがサイト内のページ・記事をどれくらい熟読してくれているかが分かります。仮にブログ記事の平均ページ滞在時間が30秒だとした場合、多くのユーザーにほとんど記事の内容が読まれていないことが推測できます。
平均ページ滞在時間が増えれば、Googleから「このサイト内のページはユーザーにしっかり読まれているため、きっと質が高いのだろう」と判断されて、検索結果で上位表示されやすくなります。そのため、この指標をKPIに設定して改善し続けることで、サイト・ページに訪れるユーザーの満足度が高まり、結果として検索上位の獲得が期待できます。
滞在時間の一つの目標は「5分程度」です。あまりにもユーザーの滞在時間が短い場合は記事の質を高めるなどの工夫が必要です。
直帰率:サイト内のコンテンツに興味を持ってもらうために
「直帰率」とは、サイト内の最初のページだけを見てすぐに離脱(直帰)したユーザーの割合です。
直帰率が高い場合、多くのユーザーがサイト内の1ページだけを見てすぐにサイトから離れているということです。もしサイト内に興味の湧く情報が多く掲載されていれば、ユーザーは1ページだけでなく、サイト内のいろんなページを開くでしょう。しかし、ユーザーから「このサイトに掲載されている情報は、自分にとって価値が低い」と判断されれば、サイトにアクセス後すぐにサイトから離脱します。その結果、直帰率が高くなります。
直帰率は、以下の計算式で求められます。
セッション数とは、ユーザーがサイトに訪問した回数です。セッション数が「1,000」で、直帰数(サイト内の最初のページだけを見てすぐに離脱したユーザー数)が「500」だとした場合、直帰率は「50%」です。つまり、サイトに訪問した50%のユーザーが直帰しているということです。
直帰率の目安は40%程度であるため、40%を超える場合は直帰率をKPIに設定し、下げられるように対策しましょう。直帰率を下げるための対策としては、ある記事を訪れたユーザーが興味を持ってくれそうな内容の記事をサイドバーや記事の最下部に表示させたり、人気記事に遷移するためのボタンを目立つところに配置するなどの方法が考えられます。
CV:より多くの成果を獲得するために
「CV(コンバージョン)数」とは、Webサイトから得られた成果の数のことです。「成果」とは、例えば商品の購入や資料請求、問い合わせなどです。これらの成果を出すことが、オウンドメディアを運営する目的といえます。
どれだけ作成した記事が検索上位に表示されたり、多くのPVを獲得できていたとしても、成果であるCVが発生していなければ意味がありません。CVは、多くの場合利益に直結します。オウンドメディアのKPIを設定する場合は、PV数やUU数だけでなく、必ずCV数も設定するようにしましょう。
PV数やUU数を増やすための施策と、CV数を増やすための施策は異なります。例えばPV数やUU数を増やすためには質の高い記事を継続的に公開し、検索上位を獲得して、なおかつページタイトルなどを工夫してCTRを高める必要があります。
CV数を増やすためには、そもそもの土台となるPV数やUU数を増やす必要があります。サイトに訪問してくれたユーザーのうち、どれだけの人が商品を購入してくれるか、また問い合わせをしてくれるかといったCVの率を上げるための工夫も欠かせません。
PV数やUU数、CV数を高めるために共通することは、「ユーザーにとって有益な情報を提供する記事・ページを作ること」です。これが、オウンドメディアで設定する様々なKPIを達成するための中核です。
被リンク数:サイトの権威性を上げるために
「被リンク」とは、外部のサイトから自社のサイトに対して貼られたリンクのことです。
例えば、記事制作代行会社である株式会社YOSCAが運営しているオウンドメディア(外部サイト)の記事から、自社のサイトに対して以下のようにリンクが貼られています。
外部サイトの記事から、自社サイトが紹介されています。この状態を、自社の立場から「被リンクを獲得した」といいます。また「被リンク数が1増えた」ともいいます。
被リンク数が増えるということは、つまり外部サイトから、自社が運営しているオウンドメディアが紹介されたということです。被リンク数が多い場合、Googleは「このサイトは他の多くのサイトから紹介されているため、きっと価値があるサイトなのだろう」と判断し、サイトが検索結果で上位表示されやすくなります。
被リンク数を増やすために大切なのは、自社サイトの価値を高めることです。検索ユーザーの悩みや知りたいことなどのニーズを満たすために、有益な情報を提供することに努めれば、外部サイトから紹介してもらえる(リンクを貼ってもらえる)可能性が上がります。
同じ業界の他社が運営しているオウンドメディアの被リンク数は「1,000」なのに、自社のオウンドメディアの被リンク数は「100」といったような場合に、「被リンク数を2年以内に5倍にすることを目標に、質の高い記事を公開し続けよう」といった被リンク数のKPIを設定することも有効です。
被リンクの獲得方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
被リンクの獲得方法とは?獲得のメリットや効果的な被リンクについても解説
運用フェーズごとのKPI設定
オウンドメディアの代表的なKPIを紹介しましたが、全ての指標においてKPIを設定する必要はなく、運用フェーズごとに「必要な分だけ」KPIを設定するのがおすすめです。
例えばオウンドメディアを立ち上げて間もない段階で「記事数と検索順位とPV数とUU数と平均ページ滞在時間、あと被リンク数もKPIに設定して、達成に向けて頑張ろう!」と考えても、KPIが多すぎて何に取り組めば良いのか分からず、混乱してしまいます。
ここでは、運用フェーズごとに設定すべきKPIについて解説します。運用フェーズは、大きく以下の4つに分けられます。
それぞれについて詳しく解説します。
立ち上げフェーズ:体制構築、行動計画
「立ち上げフェーズ」は、新たにオウンドメディアを立ち上げようとしていたり、もしくはこれから本腰を入れてオウンドメディア運用に取り組もうとしている段階です。
オウンドメディアで成果が出るまでには、どうしても時間がかかります。そのため中長期的に取り組むことを前提に、オウンドメディアを通して実現したいこと(運用目的)や、継続的に運用するための担当者配置等の体制構築、また年間スケジュール等の行動計画を立てることに注力しましょう。
この立ち上げフェーズでの取り組み・準備を疎かにしてしまうと、オウンドメディア運用を成果が出るまで継続できなかったり、間違った方向性のまま進んでいってしまう可能性が高いです。
立ち上げフェーズでは、KPIとして数値目標を立てるのではなく、あくまで準備・土台作りに徹しましょう。このフェーズで取り組むべきことは、多岐に渡ります。以下、取り組むべきことの一例です。
- 運用責任者決め
- 運用目的の明確化
- メディアコンセプトの言語化
- ペルソナの作成
- 作成コンテンツの企画
- 年間スケジュールの作成
- 各業務における担当者配置
- 業務フローの明確化
- KGIの設定
- アクセス解析ツールの導入
「運用目的の明確化」と「KGIの設定」ができないことには、スケジュール作成も担当者配置もできません。これらの設定ができてはじめて、「いつまでに誰が何に取り組むか」を決められます。
スケジュール作成や社内担当者の配置後、KGI達成のためにリソースが足りないと判断すれば外注も検討すると良いでしょう。
制作フェーズ:記事数
立ち上げフェーズで体制構築、行動計画の作成ができたら、「制作フェーズ」に移ります。
「制作フェーズ」は、オウンドメディアのコンセプトやペルソナに沿って、とにかく質の高い記事を継続的に公開し、ユーザーにとって価値のあるオウンドメディアにする段階です。
制作フェーズのKPIには、「記事数」を設定すると良いです。例えば「半年間、毎月15本の記事を公開する」といったKPIを設定します。立ち上げフェーズが終わってすぐのオウンドメディアの状態は、まだ記事が存在しない、もしくは少ない状態です。記事数は豊富にあるが、どれも質が低い状態かもしれません。
オウンドメディアを訪問するユーザーには、何かしらのニーズがあります。例えば金融系のオウンドメディアであれば、「株式についての知識を付けたい」「ある金融機関における口座開設の手順が知りたい」といったニーズを持つユーザーが訪問するかもしれません。そのため、それらのニーズを満たすための情報を提供すると良いでしょう。
価値のある情報が提供されていないオウンドメディアに、アクセスは集まりません。ユーザーニーズを満たす価値のある情報を提供することで、「このサイトは自分にとって有益だ」と判断され、その結果アクセス数が増えていきます。
しかし、記事制作に取り掛かってみると分かるかと思いますが、ユーザーニーズを満たす質の高い記事を制作するのは案外難しいです。また多くの時間を要します。
完璧を求めすぎず、まずは60〜80点くらいの記事を制作し公開しましょう。そうすれば1記事の制作にどれくらいの時間がかかるか分かるため、それを元に1ヶ月間の公開本数を決め、各担当者に記事制作を割り振るなどして継続的に記事制作を行なっていきましょう。
集客フェーズ:検索順位、PV、UU
制作フェーズで質の高い記事を十分な数公開できたら、「集客フェーズ」に移ります。
「集客フェーズ」では、制作した記事に多くのアクセス・訪問者を集められるよう、リライト(公開済み記事の修正)により記事の質を高めたり、各記事を検索結果でより上位に表示させ、クリック率を上げることなどに取り組みます。
このフェーズでは、検索順位やPV数、UU数をKPIとして設定するべきです。
質の高い記事が十分な数用意できていれば、サイトの訪問者に対してきっと価値を提供できる状態になっているはずです。より多くの方に記事・サイトに訪問してもらい、集客を活性化させましょう。
対策キーワードで記事が検索上位を獲得できれば、記事へのアクセス数を増やせます。「検索順位」をKPIとして設定し、対策キーワードで検索するユーザーのニーズを満たすような質の高い記事になるよう、リライトなどに取り組みましょう。また、検索結果に表示された記事のクリック率を上げられるよう、よりユーザーの興味を惹くようなタイトルにするのも良いです。
多くの記事で検索上位化が実現できたら、サイトに多くの訪問者が入ってくるようになります(UU数が増えます)。その訪問者にサイト内の記事を読んで満足してもらえれば、他の記事も読んでくれるかもしれません。訪問者にサイト内の多くのページを読んでもらえるようになれば、PV数が上がります。
このフェーズでは、まず検索順位やPV数、UU数をKPIとして設定しましょう。これらの指標においてある程度成果が出るようになったら、訪問者の満足度を上げるために以下のKPIを設定し、改善を繰り返すと良いです。
- 平均ページ滞在時間
- 直帰率
- 回遊率(サイトの訪問者一人当たりのPV数)
サイト訪問者の満足度が上がれば、よりサイト内のページが検索結果で上位表示されるようになり、訪問者が増えます。「サイトの訪問者数を増やすこと」と「訪問者に満足してもらうこと」を、この集客フェーズでは意識しましょう。
最適化フェーズ:CV
「最適化フェーズ」では、KPIに「CV(コンバージョン)数」を設定し、記事を読んで満足してくれた訪問者を、商品購入や問い合わせ、資料請求などの成果につなげます。
CVを獲得できないと、KGIは達成できません。これまでのフェーズで取り組んできたことの集大成として、CVをKPIに設定し、CVを獲得するための「最適化」に取り組みましょう。
CVを獲得するために、例えば以下のようなことに取り組むと良いです。
- CVに結びつきそうなユーザーを集められるよう、記事制作時の対策キーワードを見直す
- 問い合わせ時にストレスを与えないよう、問い合わせフォームを改善する
- 訪問者にメルマガ登録してもらい、価値ある情報をクローズドに発信し、関係性を強くする
- 自社商品の魅力を最大限伝えるWebページを用意し、期間限定や数量限定などの希少性をアピールして商品購入を促進する
- サイト内の目立つところや、記事の途中、最下部などにCTAを設置する。
「CTA(Call To Action)」とは、訪問者に対して何らかのアクションを促すことです。例えば、ファッションに関する情報を発信している「CUSTOM FASHION MAGAZINE(https://custom-fashion-magazine.com/)」というオウンドメディアでは、記事内の至るところで以下のように行動を促すCTAを設置しています。
適切にCTAを設置することで、記事の読者に商品購入や問い合わせなどのアクションを起こしてもらいやすくなります。
オウンドメディアのKPI設定のポイント
オウンドメディアで設定するべきKPIにはどんなものがあるか、また運用フェーズごとに設定するべきKPIについて理解できたところで、KPI設定のポイントを解説します。
KPIとは、「目標」です。より具体的にいうと、「中間目標」のことです。目標を達成してオウンドメディアの運用目的達成を目指すのであれば、目標(KPI)の適切な設定方法を理解しておくべきです。
1. KGIを元に設定する
この記事の最初のほうにもお伝えしましたが、KPIとは中間目標であるため、最終的に達成したい大目標(KGI)を先に設定し、そこから逆算してKPIを設定する必要があります。
KPIを達成し続けた結果、必ずKGIを達成できなくてはいけません。オウンドメディアで設定するKGIの多くは、売上や商品販売数、問い合わせ数、会員登録数など、企業の利益向上に密接に関連するものです。
例えば、「2年以内にオウンドメディア経由で1,000万円の売上を立てる」などと設定します。このKGIを達成するために、いつまでに体制構築・行動計画を完了させ、記事を何本公開し、PV/UU数をどれくらい集めて、何件のCVを獲得するなどといったKPIを設定していきます。
2. SMARTの法則に沿って設定する
KPIを設定する際は、「SMARTの法則」に沿って設定するようにしましょう。
「SMARTの法則」とは、以下の5つの英単語の頭文字を取ったものであり、適切な目標設定を行うために活用します。
- Specific:具体的
- Measurable:計測可能
- Achievable:達成可能
- Relevant:関連性
- Time-bounded:期限
これらの5つに沿ってKPI設定をすることで、KPIの精度が上がり、その結果行動計画が立てやすくなり、スムーズに行動に移れます。
まず、KPIは「具体的」である必要があります。「1年以内にたくさんの売上を立てられるよう頑張る」などの抽象的なKPI設定はしないようにしましょう。
そして、KPIは「計測可能」である必要があります。後からKPIの達成ができたかどうかを振り返る際に、必ず結果が「達成」か「未達」のどちらだったか分かるKPI設定をしましょう。
さらに、KPIは「達成可能」である必要があります。「オウンドメディアを立ち上げて1ヶ月以内に、日本中の人からアクセスされるようにする」といったKPIは、達成可能なKPIとはいえません。
また、KPIは「事業との関連性」がないといけません。例えばパソコンを販売している企業がオウンドメディアでKPIを設定する場合、KPIの達成がパソコンの販売へとつながっている必要があります。パソコンを販売している企業が、おすすめのお花屋さんを紹介した記事に何件のPV数を集めるかといったKPIを設定しても、意味がありません。
最後に、KPIは「期限が明確」である必要があります。「10,000件のPVを集める」というのは、適切なKPI設定とはいえません。「半年以内に10,000件のPVを集める」といったように、必ず期限を切ってKPI設定を行いましょう。
3. 運用フェーズごとに適切なKPIを設定する
先ほども解説した通り、運用フェーズごとに適したKPIというものが存在します。
オウンドメディアの立ち上げフェーズであるにもかかわらず、いきなり「1ヶ月以内に10件のCVを獲得する」といったKPIを設定しても、達成できないですし、誤った方向性で進んでしまうため、要した時間・コストが無駄になる可能性が高いです。
運用フェーズごとに適したKPIを設定し、それを元に行動計画を立てて継続的に施策を打ち続けましょう。
4. KPIツリーを活用し、逆算的に設定する
「KPIツリー」とは、KGI達成のために必要なKPIをツリー構造で整理した図のことです。KPIツリーを作成することで、KGIを達成するために必要なKPIを漏れなく整理できます。
KPIを漏れなく整理できれば、KGI達成までの全体像を一目で把握でき、いつまでに何に取り組むべきかといった行動計画を立てやすくなります。
オウンドメディアのKGIを「売上」とした場合、KPIツリーは以下のようになります。
KPIツリーの頂点は、KGIである「売上」です。KGIを達成するために必要な要素は何かをできる限り分解して洗い出し、各要素についてKPIを設定します。上の図では要素名のみ書かれていますが、実際は各要素についてSMARTの法則に沿って数値目標を設定します。
KGIを達成するために必要な要素は何か、また各要素においてどのような数値目標(KPI)を達成する必要があるのかをKPIツリーにより可視化することで、方向性や取り組むべことが明確になり、行動計画の精度が上がります。
オウンドメディアを運用するチーム内でKPIツリーを共有することで、達成すべきKPIについて共通認識を持つことができ、また進捗確認も行いやすくなります。
本格的にオウンドメディア運用に取り組み成果を出すためには、KPIツリーを作成するべきです。
5. 競合メディアを参考にする
KPIを設定する際は、他の企業が運営している競合のオウンドメディアを参考にしましょう。
競合のオウンドメディアがどれくらいのPV数を獲得しているか、どのようなキーワードで記事を作成していて、検索順位がどれくらいかなどを確認することで、自社オウンドメディアのKPI設定の精度を上げられます。
例えば年間20万PVを集めるオウンドメディアを構築したい場合、すでに年間20万PVを集めているオウンドメディアを調査して、どのような取り組みを行っているか把握することで、自社オウンドメディアの方向性をより適切に定められるでしょう。
「すでに成果を出している先行事例」は、必ず調査するべきです。自分の頭だけで「おそらくこうだろう」と考えてオウンドメディア運用に取り組むよりも、成果が出ているオウンドメディアを参考にしたほうが効率的です。
競合のオウンドメディアを調査して参考となる部分を取り入れつつ、独自性を出して、よりユーザーにとっての価値となるオウンドメディアを中長期的にリソースをかけて構築できれば、期待した成果を得られる可能性が高くなります。
競合のオウンドメディア調査には、専用のツールを活用するのが一般的です。「Ahrefs」や「Similarweb」といったツールを活用すれば簡単に調査ができますので、これから本格的にオウンドメディア集客に取り組む場合はぜひ活用してみてください。
6. 中長期的な目標を立てる
オウンドメディアを運営して成果が出るまでには、時間がかかります。そのためKPIを設定する際は、KPIツリーを活用しながら中長期的な目標を立てるようにしましょう。短期的な成果を追い求めすぎると、多くの場合誤った方向性で進んでしまい、失敗する可能性が高くなります。KGIの達成に向けて、実現可能なKPIを設定してコツコツと運用していく必要があります。
中長期的な目標にあたるKGI/KPIが設定できたら、そこから逆算してKPIを細かく分解しながら具体的に設定していきましょう。中長期的な目標は、目に見える成果がすぐには出づらいオウンドメディア運営のビジョンの役割を果たします。
今日1日の取り組みが確実に中長期的な目標、ビジョンにつながっていることが実感できれば、オウンドメディア運営に関わっているメンバーのモチベーションが上がり、やりがいや意義を持って質の高い仕事を遂行することにもつながります。
オウンドメディアのKPI達成のポイント
オウンドメディアのKPI設定のポイントを解説しましたが、次に設定したKPIを「達成」するためのポイントを解説します。
先ほど解説したポイントに沿ってKPIを設定し、ここで解説するKPI達成のポイントを踏まえて施策に取り組めば、KPI達成の可能性は大幅に上がります。
オウンドメディアの運用体制を整える
オウンドメディア運営の中核は「記事制作」です。いかに継続して質の高い記事を公開できるかが、オウンドメディア集客の成否を握っているといっても過言ではありません。
これからオウンドメディアを立ち上げようとしている、もしくはすでに運用しているが本腰を入れて取り組もうとしている「立ち上げフェーズ」で入念に行動計画を立て、計画を遂行するための運用体制を整えましょう。
体制構築にあたり、誰か一人に大きな負荷がかかるような担当者配置、業務振り分けになってしまってはいけません。社内・チームのメンバーそれぞれが得意分野を活かし、場合によっては外注も活用すると良いでしょう。
仮説検証のサイクルを回し続ける
オウンドメディア集客を成功させるためには、仮説検証のサイクルを回し続けることを意識しましょう。
仮説とは「こうすればうまくいくのでは?」という考えであり、検証とはこの考えが合っているかを確かめることです。例えば「質の高い記事を半年間、毎月15本公開すれば目に見える成果が出てくるのではないか」という仮説を立てて、実際に半年間毎月15本公開して検証します。
期待した結果であれば、継続すると良いでしょう。しかし期待した結果でなければ、「検証の結果、仮説が外れた」ということです。仮説が外れた原因を分析し、対策キーワードの選び方を変えたり、記事の書き方を変えるなどの新たな仮説を作ります。そして、さらに検証を行い、検証結果を見てまた新たな仮説を作り、検証…仮説立て…検証といったように仮説検証のサイクルを回し続けます。
最初に立てた仮説通りに全てうまくいくようなことは、ほとんどありません。「改善なくしてオウンドメディア集客の成功なし」と心得て、仮説検証のサイクルを回し続けることに注力しましょう。
検証結果を確認するためには、「Google Analytics」や「Search Console」などの解析・分析ツールを使うと良いです。まだ導入していない場合、必ず導入するようにしましょう。
社内理解を得るための活動を怠らない
オウンドメディア運用は、会社一丸となって取り組む必要があります。そうしないと、中長期的に質の高い記事を制作し続けたり、成果が出ない期間も我慢してリソースを割き続けることはできません。
「オウンドメディア運用を継続的に行い、成果が出るようになったら会社にどんなインパクトを生み出せるか」を周知し、KPIツリーを作成して進捗を細めに報告するなど、社内のメンバーの意識を向けたり、興味を持ってもらうための取り組みを意識的に行いましょう。
記事制作の業務を社内のメンバーにも割り振るなど、積極的に「巻き込む」ことで社内理解が得やすくなるかもしれません。
オウンドメディアのKPI設定と達成にお悩みなら
オウンドメディアの集客を成功させるためには、最終目標であるKGIを設定し、KGIから逆算して中間目標のKPIを設定することが欠かせません。また、運用フェーズごとに適したKPIを設定する必要があり、設定にもいくつかのポイントがあります。
「SMARTの法則に沿ってKPIを設定すること」「KPIツリーを作成し、KPIを細かく分解して行動計画を立てやすくすること」などを意識し、設定したKPIを達成するために継続的に施策を打ちましょう。
オウンドメディア運用の中核は、「記事制作」です。KGIやKPIを達成するためには、オウンドメディアから質の高い記事を公開し続ける必要があります。株式会社シンプリックはWEBマーケティングに強い編集プロダクションであり、質の高い記事を各分野のプロが協力して制作します。記事制作やKPIの設定、KPI達成のために何に取り組むべきかという計画立てなどでお悩みの方は、ぜひ弊社までご相談ください。